ここ数年、超小継テレスコに拘ってロッドビルディングやブランクス開発を続けてきました。

当初、出張が極めて多い仕事環境に合わせて良いパックロッドがほしいという考えから、パックロッドビルディングを始めました。しかし現在は、出張頻度はかなり減り、車もファミリーカーになって積載量の余裕も出て、必ずしもパックロッドである必要はなくなってきました。にも拘らず、開発はよりコンパクトで、しかもテレスコに特化した方向へと進んでいます。

もちろんニッチ故に満足いく製品が少ないというのも理由の一つです。しかしそれだけでは理由としては弱く、実際ただ単にロッドビルディングを追究するならワンピース、ツーピースロッドを組む方が面白いと思っています。

私が敢えて超小継テレスコに取り組んでいるのは、超小継テレスコだけが持つ「生き様」的な価値に惚れ込んでいるからです。この記事では、自語りも含めつつその価値、世界観について触れていきます。

オトナは、釣りのために何かを犠牲にしている

私はアングラーとしては、はっきり言って低レベルで軟弱な存在です。元々仲間内でも釣りは下手な方でした。今でもリアルやSNSでお付き合いしている方々の釣り技術や自然観察力にはただただ驚くばかりで、自分は何も理解ってないな、下手くそすぎるな、と思わされます。ただ、そんな人たちの多くは社会生活の何かを犠牲にしており、その犠牲の上に釣りを置いています。高い釣り技術の裏には少なからず当人の狂気や我慢、あるいは周囲の涙が存在しています。

漫画「進撃の巨人」アルミン・アルレルトの名台詞

捨てたものは、健康か、家族か、金か…。そんな世捨て人たちを揶揄するつもりはなく、むしろ私は尊敬しています。また自分自身も、過去には釣り以外の我儘で家族を泣かせてきました…。ですが、かつて釣り少年少女だった人たちの多くは、就職、結婚、多忙などで釣りをある程度諦めています。少なくとも、時間と体力の許す限り好き勝手に釣りに行っていた頃と同じではいられません。釣りに対して抱いていた熱意に折り合いをつけて、日々を暮らしているのです。

釣りをライフスタイルに溶け込ませる

パックロッドでよく言われる「旅行鞄に忍ばせられます」とか「機内に持ち込めます」とか「機動力が上がります」などという売り文句は、けっこう限られたシチュエーションの話だよなぁと思います。というより、それらの文句はあくまで「釣りを目的とした移動」の話です。パックロッドのボリュームゾーンである50cm前後の継ぎ竿では、このように釣りを主眼にした活動における便利さを謳っています。家族旅行でそんな竿とタックルを旅行鞄に忍ばせたらヒンシュクものですし、そんな竿を機内に持ち込む旅はほとんど釣りのための旅でしょう。また機動力と性能を天秤にかけるような釣りでなければ、そもそもパックロッドは選ばないでしょう。

それに対し、超小継テレスコが他のパックロッドと一線を画す唯一無二の個性は、「常に日常生活の中に置いておける」ということです。

旅行鞄ではなく、仕事鞄やお出かけ鞄に収まります。(タックル全体のミニマル化は必要ですが。)普通のパックロッドも仕事鞄に入るでしょ?という人は一度やってみてください。ロッドケースが鞄から飛び出たまま持ち歩く恥ずかしさ、怖さを経験するでしょう。小継の継ぎ竿なら収まるものもありますが、それでも体積が大きいので収納を圧迫します。超小継テレスコのように折りたたみ傘を携帯するくらいの感覚でいつも鞄に収めて身につけていれば、家族の目も周囲の目もほとんど気になりません。

ファミリーカーに釣り道具満載のお父さんアングラーをよく見かけますが、あれってかなり家族から嫌われます。ロッドホルダーが頭上を通り、トランクには買い出しの段ボールも置けない。釣り一家でもない限り、そのような車は家族の我慢で成り立っています。超小継テレスコ及びそのタックルは、小さなタックルケースに全てが収まります。

このボックスに私のほぼ全てのタックルが入ります。
49UL〜70Hまで5セット。可変機構を考えれば100通り以上のタックルセッティングを用意できます。

炎天下はタックルに良くないというのは置いといて、基本的にタックルは車に積みっぱなしです。でも車内の居住空間には釣りの「匂い」はありませんし、トランクも言われなければ釣り車だと気づかれない程度です。そのまま仕事にも行きますし、買い物にも旅行にも行きます。家族を第一に想い、仕事熱心なパパでいられます。(ま、私の場合竿作りに没頭しすぎて本末転倒な瞬間はありますが…。)

そして、そのような日常生活にはちょっとしたスキマ時間が生まれます。また日々の移動で少し目線をずらすと、意外とちょっとした釣り場があります。その「ちょっと」を逃すことなく、ノータイムで思い切り楽しめたら、釣りはライフスタイルから切り離されず、自然に日常生活へと溶け込みます。30分のチャンスがあったら、うち25分は竿を振っている。準備は一瞬で、片付けも迅速。終わったら何事もなかったかのように日常生活に戻るが、心の中には釣りをしたムフフという興奮が残る。「また釣りしたいな…。」

そんなライフスタイルは、ワンピースツーピースは勿論、他のパックロッドや長尺テレスコでも実現し得ない超小継テレスコ唯一の世界観だと思っています。

個人的に好きな瞬間がありまして、テレスコにラインを通す瞬間です。バットからトップまでのガイドが密に並んでいて、うまくやると一発でスッと全てのガイドにラインが通ります。うまくいくと気持ちが良くて、釣りに向けた高揚感に包まれます。あとはスナップを結んで、ドラグを緩めて鞄に放り込んでおけば、何時でも釣りが開始できます。ほとんどの竿は遊動ガイドゼロ設計なので、ルアーを取り付け、節を伸ばし、ドラグを締める、この行程にかかる時間は1分未満。それ自体が快感です。

こんな感じにガイドが並ぶので、うまくやれば一発で通せます。速いし、楽しそうでしょ?

もちろん肝心の釣り中に「あ〜妥協のタックルだな…」と思ってしまうと台無しです。だから性能と所有感はしっかりと高めたい。特に感度に拘っているのは、その短い時間でよりたくさんの情報を感じるためです。魚信に限らず、潮の流れ、底のザラつき、風の冷たさ、生臭さ等々、釣り場から発せられるありとあらゆる感覚をたっぷり浴びてから戻りたいのです。個人的には、釣獲能力より大事とまで思っています。トーナメントではありませんから、バラしたって構わないのです。そのドキドキと悔しさは次の釣りの原動力になるだけです。

これが、私が考える超小継テレスコの世界観です。もちろん世界観なんて人それぞれ。各々が好きにすればいいだけですが、もしオトナになって釣りができない、できてもつまらないという方がいたら、ちょっと触ってみませんか?最近はメーカー製でも選択肢が出てきつつありますから、私の竿でなくて構いません。普通のパックロッドだってワンピースよりはずっと機動力はありますし、やり方次第です。釣りは変わらず楽しいと思います。

湾岸ミッドナイト この言葉が大好きです

竿のみならずタックル全体のコーディネート的な話もいずれ整理したいですが、その前に一度感性の部分をまとめたいと思って書きました。釣りがいつまでも楽しい趣味であり続けますように。

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