パックロッド論② 第5の継ぎ方式とは。フルソリッド竿のマルチピース化

2020年12月14日ロッドビルド論

独特の粘り腰、どこまでも曲がるフィーリング。ちょっとマニアックだけど根強い人気のあるフルソリッドロッド。私も大好きなクチです。古くはハートランドZのヒュンヒュンスペシャルに始まり、ランドレイダーなど愛用しました。

一般的にはフルソリッド竿といえばワンピースしか存在しないと思います。しかしパックロッドマニアとしては60cm以内にまとめたい。フルソリッドをマルチピース化する方法を模索し、ようやく形になりました。それこそ印籠継、並継、逆並継、テレスコに続く第5の継ぎ方式といえるものだったのです。(大袈裟)


はい、いきなり完成です。

フルソリッドのマルチピース化1
よく使い回される画像。下2本の右端がそれ
フルソリッドの継ぎ部分
拡大写真

ベースはハートランドZ531XULXS-Sのブランクです。もちろんソリッドなのでフェルールは挿せません。代わりにどうしたかというと、チューブラーの廃ブランクを外側に被せて接着し、継ぎシロを作っています。「逆印籠方式」とでも名付けましょうか。

接着している側は断面図にするとこんな感じですね。

相変わらず絵がひどい…

絵だとチューブラーとソリッドの境界部分を斜めに接合できるようにかなりソリッドを削ってますが、ここはやり過ぎると曲がりが変になったり折れやすくなったりしますので塗装を剥ぐ程度で。(と言いつつこの竿はパワーを弱めるためそこそこ削ってます。)

この竿の場合は廃グラスロッドのブランクを使いました。注意点としてはあまり強度の低いチューブラーを使うと割れやすい点、そしてソリッドブランクにもチューブラーブランクにもテーパーがついていることです。この竿では穂先側ブランクの根元を削り逆テーパー気味に。チューブラー側もそれに合わせて削って接着しました。継ぎ目とチューブラー末端はカーボンロービングやスレッドで補強して下さい。

赤い部分を削り落とす。絵についてはもはや何も言うまい

もう一つの作り方は、ガイドがない状態で穂先側からチューブラーを滑らせていく方法です。この方が強度低下と作業ミスのリスクがある加工は少なくて済みます。ただこの場合でも、ソリッドとチューブラー内径のテーパーが合わせてあることが条件です。接着する前によくコミ合わせしましょう。またソリッドブランクに接着剤を盛った状態から滑らせていくので、はみ出た分はきれいに拭き取ってください。チューブラー内に接着剤が残るとコミ合わせやり直しです。こちらも継ぎ目とチューブラー末端は補強して下さい。

フルソリッドノマルチピース化
この方式で接着した接合部分。
ノーコメもありや

こんな感じでフルソリッドの継ぎを実現しています。マニアックすぎる需要ではありますが、フルソリッドは強度がありキャスウェイト範囲も広いので、短めのパックロッドには向いていると思います。

そしてこの方法を応用すると、内径が小さすぎる肉厚ブランクのマルチピース化や補修も可能です。

ダブル印籠継
超赤ワールドシャウラ15101Fのマルチピース化に応用

この継ぎは通常の印籠と、短めの「逆印籠」を併用しています。負荷を分散させつつアクションを整える狙いです。逆印籠だけでアクションを出すこともできますが、チューブラーを継ぐ場合はちょっと怖いですね。併用した方が精度は求められますが丈夫なはずです。


ちなみに2本目の竿の場合は、ベリーに曲がらず止まる部分をつくり「掛け感」をプラスしたいと考え、強めのカーボンチューブラーを使いました。ソリッドはよく曲がるのが特徴ですが、曲がりすぎるとも言えますからね。この作り方自体も強めに作るのに向いています。

逆に一本目に紹介した竿は、多めにソリッドを削りつつ柔らかめのチューブラーを使っています。見た目にはわからないくらいですがほんのちょっと弱く作っています。よく曲がるテイストを出したかったのです。作り方も弱めに作るのに向いています。

継ぎの強さによるロッドパワーの調整。詳しくはパックロッド論①をご覧あれ