超小継テレスコ「だから」できる調子とは
釣りフェスは本当に多くの出会いがあり、学びと刺激と今後の展望で胸がいっぱいになりました。
お会い頂いた皆様、本当にありがとうございます。

新製品をじっくり見る時間は取れませんでしたが、あとでSNSで確認したら面白いものがたくさんありました。
新製品が面白くなくなったという声は毎年見ますが、熱意と技術のある製品は今も変わらず世に出ています。
「昔のクルマが楽しかった…」ではなく、「その時の自分が楽しかった」だと思いますよ。クルマは変わらず楽しいと思います。 〜湾岸ミッドナイト 島達也〜
持ち込んだNereusとProteus、Piccolo改めKanaloaも色んな方に触って頂き、生の声を聴くことができて今後の開発のヒントを頂けました。
その中で、いい意味でほとんど気づかれなかったそれら超小継テレスコ竿の特性を、フェス後のテンションで書き殴ろうと思います。
超小継テレスコは竿の設計上不利?
私はここ数年、仕舞寸が35cm未満の超小継のテレスコロッドに拘って研究をしています。
その理由は様々あってそれ自体長々とブログになってしまうのですが、初期はやはり単に仕舞寸と仕舞「体積」を小さくしたいということでした。
しかし現在は、ワンピースやマルチピースの継竿はもちろん、ふつうの50cm以上のテレスコでも得られない性能上のメリットがあることに気づきました。
最近組んでいる竿はそのメリットを存分に生かすことで、普通の竿では得難い使用感を実現しようとしています。
それらは竿の紹介記事にも少しずつ書いており、全ガイド固定や可変ギミックなどもその一部ですが、今回は純粋に1セットのブランクス(素管)の性能として超小継テレスコがどう働くかに絞って語ります。
ステップハイテーパーという特徴
テレスコロッドは、穂先側のブランクを元側のブランクに仕舞うという特性上、元側が必ず太くなります。
特に超小継では、20cm前後のピッチで継ぎ目が現れるので、ティップからどんどん階段状に太くなります。
私はこのテーパー(竿の外径の変化度合)を「ステップハイテーパー」と勝手に呼んでいます。
先にステップハイテーパーの主たるデメリットを述べてしまうと、肉厚にできないこと、バットが太くなることの2点です。(精度・歩留まりの問題などもありますが、性能とは別の話かつ解決可能なのでここでは省略します。)
下の画像はKanaloa(7ft)のバットですが、外径約15mmとショアジギングロッド並の太さになります。

竿は細いほうが振り抜き感もよく、見た目にも軽くて高級に見えます。そのため一見するとデメリットばかりに映りがちなのですが、そこにはメリットも存在しています。
メリット①継ぎ目とハイテーパーによるパワーと軽量化の両立
超小継テレスコは、竿の中に継ぎ目が10か所前後生まれます。もちろんその部分は肉厚になり、竹でいう節のような強度・潰れにくさ・硬さをもった箇所となります。
ここがまさに竹のように、全体の張りとパワーを生んでくれます。
竿全体を肉厚にすると重量が増しますし、その重量を支えるために更にパワーが必要となります。
対して超小継テレスコは、全体に肉薄で軽量です。それを節(継ぎ目)で支えることで、竿のシャープでパワフルな使用感を、軽量なまま実現します。事実、私が組んでいる超小継テレスコは、グリップの工夫もありますが総じて同クラスのハイエンドロッド並かそれ以上に軽量に仕上がっています。
グリップを軽くしても手元が安定し、剛性も得やすいというのも、軽量化につながるメリットといえます。
え?太い竿って重いんじゃない?振り出し竿って重いでしょ?という方はこちらの記事を↓
メリット②感度を出しやすい中空グリップ構造
感度に拘った竿でよく語られる、モノコックグリップ、アーバーレス構造、エンド開放型グリップ、ブランクタッチetc.
これらは、超小継テレスコでは狙わなくても勝手にそうなるという要素です。
アーバーなんてほとんど入る隙間がありませんし、モノコックグリップをそのまま握るような構造になります。
感度(反響感度)は決して単純にこれらの要素があれば良くなるというものではありませんが、反響を出しやすい構造であることはたしかです。軽量さも相まって、ちゃんとしたブランクスなら自動的に感度が良くなる傾向にあります。

メリット③低弾性素材でも張りが出せる
同じ太さ・高さなら、円柱より円錐の方が倒れにくく丈夫というのは、経験的ないし物理的にご理解頂けると思います。
ステップハイテーパーは構造的に円錐に近く、曲がりにくい構造です。これは高弾性カーボンなどを用いると曲がりにくすぎる結果を招きやすいですが、逆に低弾性高強度素材を用いても張りが出せる構造です。
市販のグラスロッドも多くはハイテーパーを採用していて、張りと軽さを得ていますが、ステップハイテーパーはその更に極端な状態なのです。
ワンピースではここまでのハイテーパーは製造的な問題を抱えるはずですので、やろうと思ってもなかなか出来ないと思います。
Kanaloaは穂先以外フルSグラスという竿ですが、これまで竿のプロの方々を除き、初見でグラスロッドと気づいた人はいません。
Nereus、Proteusは中低弾性カーボンですが、「え~軽いね!」のあと「思ったより張りがあってシャキッとしてるね!」と言って頂けることが多かったです。それらの感覚の秘密こそ、超小継テレスコのステップハイテーパーです。
薄肉ゆえの強度の出しにくさを補ってくれる要素でもありますね。
メリット④竿のパワー・素材などを大きく可変できる
継ぎが多いということは、各セクションで自由に素材や厚み、調子を変えていけるということです。
マルチピースの謳い文句として「各セクション毎に役割を持たせ最適な素材を…」とよく言われるようになりましたが、その最たるものが超小継テレスコです。
また、ある意味自動的に穂先は柔らかめ、バットは相当に強い竿になりますので、仕事をさせるセクションを移行させることで非常に幅広いルアーウェイトや負荷に対応します。
私が設計したKanaloaは、穂先にβチタンを用いる以外はあえて前者の素材や厚み可変は行わず、ほぼ一定の厚みと割合でステップハイテーパーのみで調子を出すようにしています。
(厚みは微妙に変えてはいますが、各ピースのテーパーはほぼ一定です。)
これは竿全体の繋がりを大切にしたいからですが、それでも後者の特徴は活かしており、可変レングスと組み合わせることでジグ単アジングから海外釣り堀バラマンディまでこなすという馬鹿みたいな汎用性を手にしています。


Nereus、Proteusでも基本的に肉厚と各ピースのテーパーはほぼ一定ですが、Nereusにおいては穂先のチタンで、素材・テーパー変更が可能な特性を活かしています。
露出長11cmとチタンティップとしては短めながら、元径1.5mm→先径0.7mmと国内流通しているどのチタンティップよりもハイテーパーになっています。
このため#2のピースとの継ぎ目ではアクションがきれいに繋がりますが、そこから急角に曲がりこみます。
同じような曲げ方ができるのは他にグラスソリッドくらいでしょう。
0.7mmといえばアジング向けのチタンティップ並の細さです。それがシーバスに対応するくらい張りのあるブランクスに違和感なく接続されています。
これはふつうのワンピース、マルチピースでは不可能な極端な調子です。普通のチタンティップロッドでも実現が難しいでしょう。
違和感なく、と言いましたが、上の動画のように穂先だけ曲げると気持ち悪い曲がり方をします。しかし使用中は#2~#4あたりのベリーのステップハイテーパーがこれを支えるため気づかないですし、魚を掛けたら「きれいに曲がるなぁ」としか思われないのです。

実際、釣りフェスで触った方は、このような繊細なティップがついていることにほとんど気づかれなかったです。竿を曲げこんでもわからず、そのことに製作者としてこっそりガッツポーズをしていました。
もちろん軽量リグ専用ロッドほど投げやすいわけではなく、重めのルアーを投げる時は穂先のもたれ感をリーダーの一部として投げるような感覚が必要です。
しかしこの極端な調子によって、軽量リグでも荷重変化や感度を失わず、キャストもチタンの重みを活かして曲げていけます。それと同時に重めのルアーでも対応する汎用性も得ているのです。
Nereusの概要と実釣動画はこちら↓
ここにまとめたのは、あくまで素管の性能面におけるメリットです。これ以外にも超小継テレスコは特有の性質を持っています。それらを深め、活かし、発信していきたいと思います。
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