ロッドビルディングで最も迷宮入りしやすい点といえば、ガイドセッティングでしょう。私も未だに最適解を出すことはできず、色々と試行錯誤しながら楽しんでいます。(超小継テレスコだとガイド位置も種類もあまり選べないので、どちらかというと誤魔化し方法ばかり上手くなります…。)

なので「ここに置けばいいよ!」というアドバイスができるわけではありません。また一律の基準で示すのが難しいものでもあります。しかし「何をしたらどう変わるか」や「何を考慮するか」は整理できると思います。それらを踏まえてどう落とし込むかはビルダー次第です。

当記事はガイドセッティングのイロハを語るものではありません。現時点でガイドセッティングにおける私の思考、そして実践方法をまとめたものです。そして随時アップデートしていきます。今悩まれている方はもっと悩ませてしまうかもしれませんが、ガイドセッティングの奥深さ、面白さを一緒に考えていければと思います。

※例の如く意見、反論、批評大歓迎です!

※フライロッドのセッティングはここでは除外します。


ガイドは何のためにあるか。セッティングを変えると何が変わるか。

ガイドセッティングを思考する上で、そもそもガイドは何のために存在しているか、そしてセッティングを変えると何が変わるかを踏まえておく必要があります。リールシートから何cmの位置に、多点セッティングに、というのはあくまで結果であり目的ではありません。まずはガイドを設置する目的や、セッティングによって変化する要素を洗い出してみましょう。


当たり前だが、ラインをブランクスに沿って出し入れさせるため

最大かつ基本的な目的はこれでしょう。リール付きロッドは糸の出し入れが必要になり、それは当然ながら竿に沿って行われなければコントロールができません。何を当たり前なことを!と言われるかもしれませんが、この本来の目的に特化するとどうなるでしょうか。そう、中通し竿(インターライン)になります。しかし現代のルアーロッドは中通しよりガイド式が主流です。それは「ガイド式の方が放出抵抗が小さく、詰まり等のトラブルや面倒も少なく、ブランクス設計の自由度も高い」からでしょう。中通しでは、ラインの通過する内径を確保し、滑りを良くする加工を施しなければなりません。糸通し器具が必要で、目詰まりを避ける対策も必要です。それに対しガイド式は放出抵抗が小さく、糸通しもメンテナンスも容易です。ブランクスも内径等の制約なく自由に設計できます。これがガイド式が主流になった要因と考えます。

一方、ガイドがブランクスの外に設けられることで様々な検討事項が発生し、様々な変化が竿に起こります。以下にそれらをまとめてみましょう。


ブランクスへの接触防止・ラインの収束

中通しと違い、ガイド式ではブランクスにラインを接触させたくありません。ラインの摩耗・ブレイク、ブランクスへの傷に繋がります。なのでガイドセッティングが適切でないとこれらトラブルが発生します。接触が起こる要因は主に以下の3つです。

①リールから放出後のラインのバタつきによる接触

②竿が曲がった際のガイド間での接触(主にベイトロッド)

③風などの外乱によるラインのバタつきによる接触

①を避けるため、「チョーク」という考え方があります。リールに近い方のガイドから徐々にガイド径を落としていって、糸のバタつきを絞り込み収束させていきます。一般に絞り込み・収束を担うガイドを「チョークガイド」と呼び、最終チョークポイントとなるガイドから穂先まではリング径は大きく変化せず、ラインが直線的に放出されます。

富士工業 ガイドセッティング

↑富士工業 ガイドセッティング

リールに近い位置で早めにチョークさせていけば、直線的にスムーズに放出される区間が長くなり、最終チョークガイド以降の放出抵抗が抑えられます。しかし半ば強引にスプールからのバタつきを絞り込むことになるので、チョークガイドでの放出抵抗が増したり、バタつきを抑え切れずにブランクスに接触したりするリスクがあります。市販ロッドはこのあたりを安全方向で考え、チョークガイドを3つ以上使ってセッティングしたものが多くなっています。しかし最近はPEラインの普及もあり、ストローガイドセッティングのように積極的にバット付近で絞るセッティングも一般化しつつあります。柔らかく細いPEラインでは、バタつきは大きくなりやすいものの絞り込みはしやすく、早めに整流してスムーズに放出するセッティングが効果的になります。様々な要素のバランスを考えつつ、ラインセッティングや思想によって様々なまとめ方があるわけです。

②について、ガイド間隔があまりに広いと、竿が曲がった際にラインがブランクスに触れたり跨いだりします。特にベイトロッドではファイト時にこれが起きやすいため、ある程度間隔を狭くする必要があります。特に曲がりやすいティップ〜ベリーにかけてはガイド間隔を狭くする必要があり、必要最低限のガイド個数というものが生まれてきます。あるいはスパイラルセッティングにしてあげる等の工夫が必要です。

③については、これもあまりガイド間隔が広いと強風などでガイド間のラインが弛んで接触するリスクが出てきます。①、②に比べると限定的ですが、あまりに極端な空け方をするとトラブルが増える可能性があります。またブランクに接触しないまでも飛距離低下やラインスラック管理が難しくなることから、強風下で行うことが多いソルト用ロッドでは多点配置が増えてきています。


曲がりへの影響・荷重

ガイド付きロッドにおいて、竿が曲がる原理は延べ竿と少し違います。下の図を見てください。

例えばこの図でラインが下に引っ張られると、各ガイドも引っ張られます。するとガイド間のブランクスが曲がり、ガイド同士が近づいていきます。各ガイドの荷重が竿を曲げるわけです。そのため、ガイド数が少ないと一つ一つのガイドにかかる荷重が大きくなり、ガイド間の曲がりも大きくなります。そして荷重は曲がりの頂点に集中します。あまりにガイドが少ないと、同じブランクス・同じ荷重であっても大きく曲がってしまい、パワー不足や折損のリスクが高まります。なのである程度のガイド数は必要になってきます。一般的に、よく曲がるティップやベリーでガイド数が多くなるのはこのためです。への字アクションの竿や、超先調子の竿の場合は、ブランクスが急角に曲がる箇所がありますので、その近辺はガイドをしっかり配置しましょう。

しかし無闇に増やせば重量増や抵抗増、及びそれに伴うデメリットも出てきますので、バランスを探ることになります。

実際にガイド数を変えるとどれくらい変化するのか、イシグロさんとHitotoki Worksさんの動画がわかりやすいので引用しておきます。


重量・硬さ・慣性・空気抵抗・反発

ガイドセッティングを考える時、無視できないのがスレッド及びコーティングによる影響です。ガイド自体は現代のものはかなり軽量で、剛性も必要十分に抑えられています。しかしほとんどのガイドはスレッドとエポキシコーティングによって固定されます。これらはガイド本体より重く、硬いのです。スレッドとコーティングまで含めると、ガイド追加は相当のロッド重量増、また硬くなる要因となります。もちろんガイド自体の重さと硬さも影響はあり、特にステンレスのダブルフット等を採用するとかなり変化は大きくなります。(コーティングも増えますしね。)

ではガイドをつけまくったらガチガチバキバキの竿になるか?そうはなりません。一般的なセッティングの範囲では、だいたいの場合硬くなることより重くなることの方が影響を感じます。素振りをした際に竿自身の重みでしなる感覚が強くなります。重くなることで慣性が増し、更には空気抵抗も多少大きくなるので、反発もゆったりしたように感じます。しかし実際には硬くなっており、またガイド間隔が狭くなっているので前述の考え方の通りパワーもあります。

フィーリングの方向性としては、ガイドを少なめにすると「シャキッとしているのに掛けると曲がる」 感じが出しやすく、ガイドを多めにすると「しなやかでパワフル」な感じが出しやすくなります。同じブランクスでもかなり性格が変わりますね。


継ぎ目の補強

継ぎ竿の場合、折れに繋がりやすい位置、例えば継ぎ目のメス側(玉口)、またはオス側の端や印籠芯の端の真上にガイドを配置すると、いくらかの補強になります。勿論これらの補強はブランクス側の設計で対処すべきことですが、ガイド及びスレッドによってある程度の強化が可能です。

おまけとして、これらの位置にガイドがあると脱着時に回しやすいという副次効果もあります。(やり過ぎは破損につながるので禁物です(^_^;))


ファイト時のライン角度(巻き取り抵抗・ドラグ値)

前述の図を改めて見てみましょう。ガイドが少ないと、ガイド部分でラインが強く折れ曲がっています。この状態は巻き取り時に摩擦が大きく発生します。この摩擦抵抗は、魚がラインを引く力にプラスされて巻き取り抵抗となります。そのため、角度がなだらかな状態に比べて巻き取りにくくなります。

ドラグ値にも影響があります。リールからまっすぐラインを引っ張って設定したドラグ値よりも、ラインをガイドに通して曲げた時の方が摩擦抵抗等のぶん大きな値から滑り出します。

ガイドが増えることによる摩擦抵抗の増加もあります(無負荷であれば、当然ガイドが少ないほうが摩擦抵抗は小さいです。)し、ブランクスの曲がり具合やガイド足高にも影響されるので絶対ではないものの、基本的にはガイド数が多くラインがなだらかに折れ曲がる方が巻き取りやすく、ドラグもスムーズだといえます。

※特にスピニングロッドにおいて、第一チョークガイドはリールからかなり離れています。柔らかめのロッドではバットもよく曲がるので、ここの抵抗は馬鹿になりません。慎重に位置を吟味したいポイントです。

ガイドを増やすと感度は向上する?

一般的に、ガイドを増やすと感度が向上すると言われます。これはどういった理屈でしょうか?ここでいう感度は、振動の伝達性能のことと思われます。この振動伝達は、様々な要素の複合で成り立っていて、その中でガイドセッティングが占める比率は小さいと考えています。なので一概に言うことは難しいのです。そしてよく言われる「ラインとの接点が多いから感度が良い」という理屈に私は懐疑的です。何故なら、そんな単純な話で整理できないからです。後述しますが、ガイドが感度に与える影響は極めて複雑です。

またラインテンションがかかっていない(ほぼ)無負荷状態を考えると、この状態は感度をとりにくい条件です。少なくともこの条件下では、ラインを通した水中からの振動伝達の大半は、トップガイドが揺らされることで伝達されると考えます。もちろん他のガイドからもラインを通じての伝達はあるでしょうが、トップガイドほどではありませんし、逆にガイド(及びスレッド・コーティング)はその振動を減衰させる要素にもなり得ます。そして前述の通り振動伝達においてはガイド以外の要因の方が大きな影響力を持っています。

とはいえ、トップ以外のガイドの影響も少なからず存在します。特にラインを張った状態では、トップ以外のガイドからの振動入力も相当量あるでしょう。張らずともラインとガイドを接触させようとする小径多点配置や、ジグザグガイド等の設計思想もあります。それらを考えたときは、単に多点で振動を拾えばよいという考え方では説明しきれません。はっきり言って泥沼ですが、後で論じましょう。


ガイド数(ガイド間隔)による影響まとめ

ここまで主にガイド数(ガイド間隔)の大小による影響を論じました。一度表にまとめておきましょう。そして、それ以外にもガイド位置が与える影響があります。次はそれらを論じてみましょう。

要素ガイド多ガイド少
ラインのブランク接触低減
キャスト時ライン収束
風によるライン膨らみ抑制
ガイドの摩擦抵抗(無負荷)抑制
ガイドの摩擦抵抗(高負荷)抑制
巻き取り力
ドラグのスムーズさ
曲げ強度
ロッドパワー
硬さ
フィーリングだるいシャープ
空気抵抗の小ささ
軽量化
振動の減衰抑制

竿の振動モードとブレの収束

ロッドを振り込むと、しばらくブルブルと振動(ブレ)が続き、やがて収束します。この収束までのロッド自体のブレは、キャスト時は不快感や飛距離低下、バックラッシュの原因となります。操作時は良くも悪くも操作感に影響を与えます。また水中からの振動伝達においてもこのブレ方は関わってきます。つまり感度への影響です。ガイドセッティングとともにこのブレを分析してみましょう。

まず、棒状の物体の振れ方は「振動モード」という表現で表すことができます。ロッドの場合は、両端が固定されておらず自由に振動できるので、「自由端-自由端」という場合の振動モードを考えるのが一般的でしょう。  ※ジギングでグリップエンドを固定する場合は変わってきますが一旦置いておきます。

↓引用:振動モードの解説と図
https://ezu-ken.com/hammering-6/

竿を振り込むと、上の図の左上、自由端-自由端の1次振動モードに表すような振れ方をします。竿の真ん中付近に振動の「腹(一番振れる部分)」、穂先側と竿尻側からそれぞれ少し真ん中寄りの位置に振動の「節(振れない部分)」がきます。

この節の位置は、仮に竿が均一でテーパーもない理想的な棒だった場合、全長を100%として両端から約22.4%の位置にきます。釣り竿の場合は竿尻に向かって太くなり、またリールやグリップの重量、グリップを持つことによる影響があるため、節の位置は理想位置からズレます。とはいえ、概ね全長の1/4あたりに節が2か所できると考えれば良いでしょう。

可能であれば、実際にお手元の柔らかめの竿を振り曲げてみてください。リールをつけた状態(これ重要)で竿を軽く持ち、エンドをタップするか、竿を振って揺らす動作をしてみてください。1次振動モードのイメージが掴めると思います。この節の位置と腹の位置こそ、ガイド配置における重要ポイントです。

キャスト時、竿は振り込んだ後しばらくブレが残ります。この間もラインは放出され続けますので、ラインはリールからのバタつきと、ブランクスのブレの両方に晒されます。そこで、例えば最終チョークガイドが節に配置されていたらどうでしょうか。最終チョークの時点で綺麗に収束が完了し、そこからは穂先のブレのみでスムーズに放出されることになります。この節をうまくセッティングに活かせると、スムーズなキャストフィールに繋がる可能性があります。

また、腹の位置の把握もセッティングに活かせます。腹を振れにくくしてあげると、竿のブレが小さくなってスッキリとしたフィーリングが得られます。どうすれば振れにくくなるか?そう、ガイドを置いて重く硬くすることが1つの方法です。

試しにお手元の柔らかめの竿で、腹を見つけましょう。そして、そこにマスキングテープ等をぐるぐる巻いてみて下さい。剛性はほとんどないので重量だけの変化ですが、かなりフィーリングが変わると思います。収束が悪いと感じている竿は、重くしたはずなのに収束が良くなったように感じる可能性があります。

ロッドの収束を良くしたければ、この腹の位置にガイドを置いてあげるのがオススメです。ラインがブレやすい位置でもあるので、ブレを抑える効果も期待できます。逆にロッドのブレやラインスラックを活かしたいミドスト用ロッドなら、敢えてこの位置を外してセッティングするのも一案です。いずれにせよ、腹の位置を把握することがガイドセッティングの幅を広げてくれます。

少し脱線。感度にも振動モードは影響する?

若干ガイドセッティングの領域を出てしまいますが、この振動モードを用いた考え方は感度にも影響します。トップ以外のガイドが与える影響もここで論じましょう。ただし…泥沼です。

前の図で、左上の1次振動モードの下に2次、3次と図が並んでいます。これらは振動の節が重なるようになっており、いずれもこの棒を揺らした時に揺れやすい振動の形を示しています。これら揺れやすい振動の振動数を「固有振動数」と呼び、物体の材質、形状などによって決まっています。固有振動数が感度に与える影響は、私もまだ完全に掌握しているわけではありませんが、1つわかりやすい実験方法を提示してみます。1次振動モードによる影響を確認する方法です。このモードが一番揺れやすいモードですし、シンプルでわかりやすいです。

お手持ちのロッドで前述の節(竿尻側)を探して、そのあたりを握ってブランクスを軽く叩いてみて下さい。節がよくわからない場合は、竿尻から全長の1/4あたりを持ってやってみて下さい。振動が余韻を残して手に伝わってくると思います。節はほとんど振れないため、手で押さえてしまっても振動はあまり押さえ込まずに済みます。うまくいけば「定常波」として振動が続き、節の前後の振れが長く残ってくれます。逆に振動の腹を持って押さえてしまうと、一発目の振れはある程度大きいものの、微細な振動はすぐに止まってしまいます。「反響感度」と言われる振動の余韻感(サステイン)は、反響という言葉の誤解によって、グリップ内で音が跳ね返るようなニュアンスで伝わってしまうこともあります。ですが本来は、こういった振動モードの話かもしれません。

こう論じますと、振動モードの話はむしろグリップ位置にとってかなり重要であることがわかりますね。今はガイドセッティングの話をしていますので、その話は一旦切り上げておきますが、トップ以外のガイドによる影響を振動モードを踏まえて論じることができます。

各振動モードの節に置いたガイドは、振動を邪魔せず振動減衰が抑えられます。そして新たな振動がトップ以外のガイドから入力された場合も、既存の振動モードは維持されて新たな振動として追加されます。ただし、既存の振動を強めるようなこともないでしょう。節にガイドを配置する考えは基本的に合理的です。

逆に、腹に置いたガイドは、前に書いた通りブランクスの振動(ブレ)を抑制する方向に働きます。これは振動伝達の観点ではマイナスの要素です。しかし、腹に配置したガイドからの入力がうまく既存の振動と一致した場合は、振幅を大きくしてくれる可能性もあります。逆に少しずれてしまうと、振動を相殺してしまい逆効果にもなりえます。腹を狙ってガイドを配置する場合はこれらデメリットも加味する必要はあります。

と、腹配置が感度面でマイナスが大きい印象を書きましたが、実際には節のみにガイドを配置することはほぼ不可能です。モードが2次、3次と変われば、腹の位置は変わり、元の節の位置に腹が来たりします。節の位置は1次モードでは2か所しかなく、現実的には完全に節のみになるような配置は不可能ということです。また適当に腹の振動も拾わないと、振幅が大きくならない可能性もあります。

更に。ガイドの追加は当然ながら重量増、そしてエポキシ等による振動吸収に繋がります。そもそもこの点は感度にとってはマイナス要素です。そして、ラインからは振動の入力もありますが、逆に振動が始まったロッドにとっては逆に「ラインに振動を逃がしてしまう」ポイントにもなります。

特性を変化させるという意味では、多点ガイド及びそのスレッド・コーティングで竿が重くなると、固有振動数が下がり、ガイドが少ない状態と比べてゆったりした振動で振れやすくなります。これはロッドのフィーリングとして一般的な感覚にも合う話だと思います。どういった振動が入力されやすいか、どういった振動を優先的に拾いたいか、等を考慮してセッティングできれば、より用途に合った感度をだせる可能性があります。極めて難易度が高く、また恩恵も限定的ではありますが、追及する方向としては面白いです。

更に更に。ラインテンションがかかっている状態では、ラインから伝わる入力はトップガイドへの一発の揺すりだけではなく、ライン自体の振動がトップ以外のガイドからも伝達されると考えられます。この時、ガイドはラインの振動を止める場所として働きます。すると、ガイド間の距離がそのまま、ガイドを通るラインの振動の波長となりえます。理論上はターゲットとなるラインの波長を決めたら、その波長に合わせたガイド間隔を取れば、トップ以外のガイドからの入力が最大化されます。

※この点は、実現可能かどうかを流行りのAIと議論してみました。結果は、釣りでよく入力される波長に合わせると、ガイド間隔がやや広くなりすぎてしまいます。また等間隔配置が求められるため、実装がかなり難しいという結論でした。とはいえロッド重量等の調整で、特性を効果的な方向に寄せることはできるかもしれませんね。

更に更に更に。人の手が振動を感知する器官は「パチニ小体」と呼ばれます。パチニ小体が感知しやすい周波数は様々な文献で200~300Hz程度と言われています。この領域に固有振動数を合わせてやれば…なんて発想もあり得ます。もはやガイドセッティングだけでは語れない領域です。

↓参考:慶應義塾大学理工学部
「触る」ということ ~ヒトとロボットのの触覚~

ガイドによる感度への影響、とても複雑な泥沼だということが伝われば十分です。そもそも論として、刻々と変化する竿の状態に対して常に理想的な配置ができるわけではありません。例えば、リールの重量が変わると振動の位置もズレていきます。リールを1種類に固定するというのは現実的ではありません。そして最大のファクター、アングラーの握る位置と強さが関係します。またラインテンションがかかると、これまた振動の位置がずれます。それらの状況も踏まえて突き詰めるのは至難の業です。ある程度の幅を持たせてBestでなくBetterなセッティングを探ることになります。

※なおグリップを強く握ると、振動モード形状は固定端-自由端に近づきます。そこにラインテンションもくわえると、固定端-固定端に近づきます。複雑ですねぇ。

そのため、実釣で振動伝達感度が最も落ちやすい無負荷状態(ただしリールは基準となるものを載せた状態)で、1次振動モード程度までの考慮を行い、あとは他の要素から煮詰めていった方が、現実的な感度向上を見込めると考えています。

参考に、振動モードと感度の関係を研究した例としてオリムピック社のweb記事を貼っておきます。


がう流 基本的なセッティングの出し方

さて、ここまでの内容を踏まえて私がどのようにガイドセッティングを出しているか、2026.2現在の流れをまとめてみましょう。この手順はロッドビルダーによって様々で、私の流れもあくまで一例です。もっと良い方法もあると思います。

そしてこの方法はワンオフロッドの製作を想定しており、量産ロッドとは異なります。そのような前提の下、何かのヒントになり、議論が生まれればと願って記します。

① まずグリップ等を組み上げる

ガイドセッティングはロッドにおいて最重要要素でしょうか。それはおそらく違います。ロッドの調子、レングス、グリップ長、そういったものが使用感に大きく関わるため、私の場合はそれらを先に組み、ガイドセッティングが最後です。

そしてこの時点でも、振動モードを仮組みで確認したり、おおよその検討をつけたりしながら組んでいきます。特にリールシート位置・アーバー位置は、前述の振動一次モードに深く関わってきます。例えば、竿尻側の節の位置にリールシートを配したら…。これはまた別記事にてまとめたいと思います。とはいえ感度を優先するあまり、極端な長さのグリップを組むのは本末転倒でしょう。使いやすさを優先した上で、ガイド以外の組み上げを進めていきます。

ただし、この時点でグリップエンドだけはふさがず開けたままにしておくことが多いです。最後の微調整、味付けをする際にグリップエンドの設計は有益です。ここを残しておくと最後の「調律」的な作業がしやすいのでオススメです。

② 改めて1次振動モードの節と腹の位置を確認

使用感に関わる部分の組み上げが終わったら、いよいよガイドセッティングです。この時点で、改めて1次振動モードの節と腹を確認してみましょう。必ず「よく使うリールを装着した状態」で、リールシートを優しく持ち、グリップエンドを軽く叩くか、竿をぶらぶら揺すると位置がわかります。リールの重量や、握り具合によっても位置は変わりますし、とりあえずはだいたいで構いません。どうせガイドを載せてコーティングするので、それだけで微妙にズレていきます。実釣では前述の通りラインテンションでも変わります。それでも、ラインが緩んで振動を拾いにくい無負荷状態の構成を良くしておくことは確実にプラスだと考えています。キャストのフォロースルー中も、握り込み過ぎなければほぼ無負荷に近いですしね。

③ 節と腹をどう使うかを決める。

2か所の節と、1か所の腹。これらには基本的に部品を配置したい箇所です。前述の通り、節にガイドを配置するとラインのブレ収束や感度面で有利になり得ます。腹にガイド(というよりウェイト)を配置するとブランクスのボヨンとしたブレを収束させやすく、ブランクスのブレでバタついたラインを抑える効果も期待できます。しかし振動を減衰させないという観点では、腹にあまり重たいものを配置するのは得策ではありません。なのでガイドか、ちょっとしたウェイト程度までです。リールシートを配置するのはさすがに悪手となりますが、そんなに長いグリップはほとんどないでしょう(笑)

加えて2次、3次モードも考慮できると感度面では変化が得られるかもしれませんが、あまりに複雑になり、他の要素との調整も取れなくなります。なので基本的には私も1次モードまでの検討ですが、沼に漬かりたければどうぞ…。ガイドを極端に少なくしなければ何処かしら良い位置に当たると思いますので、通常は複雑に考えなくて大丈夫です。

④ 最終チョーク位置とガイド間隔の検討、及び振動モードの微調整

実際は組む前に概ね方向性を決めていることが多いですが、とりあえずここから細かなセッティングに入っていくことになります。まずは最終チョークガイドの検討です。③の段階で、穂先側の節はまず問題なくガイドを置くことができているはずです。スピニングロッドの場合、ここを最終チョークガイドとするのが1案です。ラインの収束向上が期待できます。

竿尻側の節は、グリップの長さや設計によって位置関係が変わっています。リールシート直下になっている場合(この場合、入力された振動が長く続く感度設計になっています)や、バットのリールシート寄りの場合、バットのベリー寄りの場合、などが考えられます。バットに節がある場合、ベイトロッドや、ストローセッティングを採用するスピニングロッドであれば、この竿尻側の節に最終チョークガイドを配置できる可能性があります。それが難しい場合、とりあえず他のガイドを置くか、もうそこは諦めるかして適度な最終チョークガイド位置を設定します。あるいは「調律」によって節の位置をズラすことを検討します。

<バランサーによる調律>
この時点でエンドは解放されています。なのでここに板重りやエンドキャップ、市販のバランサー等を入れることで振動モードの形状をズラすことが可能です。一般的には、エンドバランサーにより竿尻が動きにくくなり、節や腹が竿尻側に少し移動します。しかしこれは諸刃の剣で、全体の振動を弱めてしまう可能性があります。また重くなることで、竿を振る際に竿尻側が動きにくくなったり、固有振動数も変化したりします(これは良くも悪くも…)。なのであまり極端なことはできません。ズラせるのもせいぜい数cmですので、まさに「調律」という感覚で行います。なお経験的には、この作業で感度がよく出る配置をつくると、自然とロッドバランスも良い感じになることが多いです。

⑤ チョークガイドとその他のガイド位置の仮決定

スピニングリールの場合、チョークガイドのガイドリングは、スプールを底辺、最終チョークガイドを頂点とした円錐形状もしくはベル形状になっていることが好ましいです。高足のガイドを適宜並べてちょうどいい位置を探します。円錐形状が大きく崩れていると、ラインを巻き取る際にガイドの上側を通る時と下側を通る時のテンション変化が発生し、ガタガタした巻き心地になります。これは使用感や感度を大きく下げる原因になりますので、なるべく避けましょう。

※慣れていないと、③、④で決めた最終チョーク位置と辻褄が合わなくなることも多いでしょう。その場合は気にせずチョーク位置をズラして良いと思います。チョーク形状の乱れは使用感に大きく影響しますが、節配置はそこまで劇的な差を生むわけではありません。優先順位は間違えないようにしたいです。

この位置をベースに、チョークガイド以降のガイドを配置していきます。この時に、③、④で決めた穂先側の節の位置や、継ぎ目付近のウィークポイントを潰すように配置できると理想です。

ガイド間隔は悩むところですが、前述のガイド間隔による傾向も踏まえながら、自分が得たい性能やフィーリングをイメージして配置してみます。曲がりや荷重のことを考えると、セオリー通り穂先側は間隔を詰め、バットに向かって少しずつ広げていくことになります。もし振動の節に拘るなら、節になりそうな位置を狙って均等配置に近い置き方で、荷重分散も兼ねて多点配置…なんて発想もできます。巻き物ロッドなど常にある程度の負荷がかかるような用途の竿では、実釣でかかる負荷を再現してその状態で位置を検討して…など、やろうと思えば色々な発想ができますね。つまり、泥沼です。

こうやって配置していくと、どうしても節や継ぎ目の配置はうまくいかないことも多いです。それは仕方ありません。繰り返しますが、優先順位があって、節配置は最優先事項ではありません。

ガイドの種類は、基本的に高さとリング径をベースに選んでいきます。チョークガイド以外は、ラインがブランクスに接触しない範囲で低い方が、基本的にはロッド性能を活かしやすくなります。ブランクスから遠いほど曲げ込んだ際に捻じれます。

<ガイドの種類・素材はどうするか>
負荷が小さいティップ付近は比較的軽くて華奢なガイド(KTなどのシングルフット)、バット付近は比較的丈夫なガイド(KWなどのダブルフットなど)がセオリーです。あとは軽量化寄りに組むか、強度優先で組むか等、竿の性格やコンセプトに合わせて選定します。フレーム材質は、剛性を求めない限りはチタンの方が耐食性と軽さの面で有利です。ただしステンレスも剛性や素材自体の硬さというメリットはあります。リング材質は、個人的にはトルザイトを推しますが、糸鳴りが出やすいということでトップと第1チョークガイドのみSiCにすることも多いです。SiCは硬度・放熱性など極めて優れた素材なので、最新の薄いSiC-Sリングであれば重量面でもトルザイトにそこまで劣ることはなく、これも好ましい選択肢です。それ以外のリング材質も、わざわざロッドビルディングで選ぶことは少ないでしょうが、実釣で問題になることはほぼありません。

また「このへん少し硬くしたいなぁ」となれば、敢えてシングルフットでよいところをダブルに変えて、フレームの硬さとコーティングの硬さをくわえてあげるといった微調整も可能です。もっと剛性を出したければ、AGSガイドも選択肢となります。癖のあるガイドですが、硬さと感度が欲しい場合は優秀です。

<ガイド径はどうするか>
ここまでガイド径について触れてきませんでした。もちろん重要な要素です。あくまで目安程度ですが、私が考えるガイド径を軽く書いておきます。ただし最終チョークガイド~トップガイドまでの話であり、チョークがしっかりなされてラインが整流された状態という前提です。そして完全に主観です。

トルザイト3 ・・・市販最小。飛距離を求めないライト用途のスピニング専用という印象。

トルザイト3.5・・・小径設計のライト用途の基準。4lbリーダーくらいまでは問題なく抜ける。

トルザイト4 ・・・ライト用途で比較的抜けも考慮しつつ小径なセッティング。

トルザイト4.5・・・小径設計のミドル用途の基準。飛距離最優先でなければ20lbリーダーも抜ける。

トルザイト5~5.5・・・ミドル用途で比較的抜けも考慮しつつバランスが取れたセッティング。

それ以上  ・・・抜けを重視したミドル用途。およびヘビー用途。

SiCの場合は1つ大きい径を選ぶと、内径がトルザイトとだいたい揃います。

また私の場合は、トップガイドだけティップやベリーのガイドより0.5ほど大きくする場合があります。トップはラインに急角がつきやすいため、トップを大きめにすると抜けが良くなる印象です。他はラインの整流がうまくいっていれば、まっすぐ抜けるだけですから、トップとは位置づけが少し違います。

⑥ 仮止めとテスト

マスキングテープや、セメダイン社のラピー等で仮止めをします。ラピーはロッドビルダー御用達で、わずかに伸びがあって丈夫なメタリックテープです。リールも載せて実際の振り抜き動作確認、実際にラインを通しての糸抜けや収束確認、軽く曲げ込んでブランクスに当たらないか、荷重に対しうまく受け止められているか等の確認をします。まずは目視で曲がりに追従していない(ラインが急角に折れる)箇所を見つけて、潰していきましょう。また配置が悪いと、曲げ込んだときにテープが剥がれたりしますので、これは1つの目安になります。ラピーはそのまま短時間の実釣テストくらいならできる強度がありますので、逆にラピーで釣りして外れるようならセッティングをミスっています。

⑦ スレッド巻き・コーティング・最終調律

ここでは細かいやり方は省略しますが、ようやくコーティングして最終組み上げです。この作業を経て、スレッド&エポキシの重量と硬さにより、フィーリングや振動モードも少し変わります。なので改めて、最後の調律です。使用感や振動伝達の具合を確認し、バランサーを盛り足したり、ガイドにエポキシを盛り足したりして微調整を行い、セッティング完了です。


大変長いブログにお付き合い頂き、ありがとうございました。AI全盛の時代に長文を自力で書くのは大変ですが、自分の整理のためでもあります。

またここまで手を掛けて竿を組むと、自分が何を求めているのか、どんな竿にしたいのか、なぜそのパーツを配置したのか、そういった狙いや意思が整理されます。それこそロッドビルディングの面白さであり、その面白さを感じて頂ければ、この記事を書いた甲斐があります。

やってみて、「これは違うのでは?」「これも大事では?」と思うことも出てくると思いますので、ぜひコメント欄やSNSでお聞かせください。私も全てを書けているわけではありません。議論できることが楽しみです!

あ~…あとは感度やグリップ設計やアクションや…まだまだ要素は無限にありますね。ロッドビルディングは面白い!

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