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ここ数年増えてきた前傾リールシート

当記事で「前傾リールシート」と呼んでいるものは、リールシートのフォア側がリア側より低く(ブランクスにより近く)なっていて、リールがフォア側に傾くようなシート形状を指します。

ここ数年、いくつかのメーカーやビルダーさんがこの前傾リールシートを採用してメリットを謳っています。私自身も様々なロッドと構造で試して使い所が見えてきたので、作品紹介を兼ねて一度記事にまとめようと思います。

前傾リールシートの発祥?

起源についてはよくわかりません。様々なビルダーが試行錯誤をする過程で試されてきた手法の一つだと思います。私がリアルタイムで知っているのは、以前当ブログでもご紹介したウルトラ変態(褒め言葉)カスタム職人のゲンタマイシンさんです。2018年にカーボンモノコックグリップを流用した異形前傾シートを採用されています。

おそらくはそれ以外にも様々なビルダーさんが試されてきたことと思います。当時の私は、あまり製作中の竿に対するメリットを感じず試してきませんでしたが、TULALA及び前田製作所様のストローHD-DIVガイドセッティングに出会ってからその価値を見直すことになりました。

ストローガイドセッティングと前傾リールシート

ストローガイドセッティングの主たる特徴は、小径超多点配置と、極端にリール寄りのバットガイドです。

↓そろそろこの記事もアップデートしなきゃですね…。

ストローガイドセッティングの考察とアレンジを始めてから、有り難いことに前田製作所様とのご縁も生まれ、何とTULALAオリジナルの前傾リールシートのサンプルをご提供頂けることになりました。(その節はありがとうございました!そしてインプレが遅くなりすみません…この場を借りてお詫び致します。)

そう、ストローガイドセッティングのコンセプト完成には、前傾リールシートが不可欠だったのです。

サンプルは2つ頂戴しましたが、1つはこちらの樹脂製大径タイプです。前後にフジ製のフードを装着する形ですが、かなり太めで、強い傾斜がついています。この竿で採用した理由は、バットガイドを近づけて、かつ位置を可変させるガイドセッティングを機能させるためです。

ストローガイドセッティングと前傾リールシートの相性が良いのは、バットガイドの位置にあります。PEラインの細さと柔らかさによるメリット・デメリットを活かして、バットガイドで早々とループを収束させることがストローガイドの基本と考えられます。太いモノフィラ主体のラインセッティングですと、大径ガイドを使って緩やかに収束させるセッティングが好まれてきました。しかし昨今のPEラインでは、むしろラインを早めに収束させてなるべく緩ませずに通していく方が、飛距離が安定して風にも強いということがわかってきています。多少ラインに角度がついても、柔らかなPEラインでは影響は小さく、むしろバタつきの抑制が重要です。そのためストローガイドセッティングでは極力リールに近い位置でラインをガイドに飛び込ませます。ここでリールシートが前傾していると、より近い位置で飛び込ませることができます。更には副次効果として、バット寄りにガイドか多数配置されることで、従来のスピニングロッドではあり得ないほどバットパワーを活かせるセッティングとなります。ラインスラックも抑制され、レスポンスや感度にも優れます。

この竿はストローガイドセッティングではありませんが、5ft前後でレングス可変というかなりガイドセッティングが難しいオーダー条件に前傾リールシートが大変マッチしていました。また得られるメリットは、ストローセッティングに対するメリットと近いものでした。

バットガイドは写真の印象よりかなり近い位置にあります。
ショートモード。この位置でもしっかり抜けます。

5’3″と4’7″での可変という難題ですが、前傾リールシートのおかげでかなり近いバットガイドでもスムーズにラインが飛び込みます。併せてバットから2つ目のガイドをチョークガイドにしているので、多少バットの長さが変わってもラインの軌跡に大きな影響がありません。ついでにショートレングスのスピニングという条件でもロッドパワーを使い切れる多点セッティングが実現し、タフな使い方をされるユーザー様の条件に対応できました。

前傾リールシートの基本的なメリットは、そのままストローセッティングのメリットに通ずるということです。逆にストローセッティングのようなメリットが活かせない用途では、無理に採用しなくて良いとも言えます。では前傾リールシートはキワモノなのか?決してそうではありません。ストローセッティングが得意とはしない(使えないわけではないですよ!)モノフィラ向けセッティングでも、バットパワーを活かしたい場合やラインスラックを抑えたい場合に有効ですし、採用範囲は意外と広いと言えます。

なおこのシートは、見た目にはかなり大きく、実際に重量もかなりのものです。一般的にはロング&ヘビーロッド向けでしょう。しかし丸みのある形状によって、握り込むと収まりが良く、このようなショートロッドにおいても手元の安定感を生み出してくれました。採用されている竿を見かけたら、是非手にとってみて下さい。


頂いたTULALA製前傾シートにはもう一種類ありました。硬質EVA製で、よりライトな仕様です。こちらも最近ようやく採用できたのでご紹介します。

こちらはより普通?の感覚で採用できるシートになっています。握り心地も、細身かつ掌にフィットする具合の良いものです。またEVAで作られていることにより、リールシート内のブランクの曲がりを阻害しません。バットガイドを近づけられる特性と、曲がりを活かせる特性を、今回はフルグラスロッドのオーダーに適用してみました。

ベースとなる竿は鯰レンジャー。かの有名な鱒レンジャーの兄貴分で、Mクラスのパワーながらフルグラスロッドという、かなり重たく、パワー溢れるロッドです。この曲がりとパワーを活かしたかったので、まさにうってつけのリールシートでした。フルグラスを曲げ切る気持ちよさと、バットパワーを余すことなく活かす感覚を与えられたと思います。

ライトゲームへの適用と、スピニング・ベイト兼用ギミックへの応用

前傾リールシートのもう一つの潮流として、アジング分野で展開をされているMIZARさんが発表している、NT-Bシステムがあります。最近は特許も取られたそうです。

※「特開2023-162569」で検索して頂くと見られます。
 https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

↑MIZARさんの特許資料より

特許はテーパードパイプ(上記画像の4番)に、前後異径のフードを組み合わせた構造になっているようです。請求項は前傾式すべてを網羅するわけはなく、このようなパイプ取り付け方式となっています。NT-Bシステムにおいては、アジングロッドにおいてバットガイドを近づけることによるガイドセッティングの最適化、重量バランスの改善、ロッドパワーの向上などがメリットとして謳われています。

私も、前述のストロー的なセッティング以外にも色々な竿で試してきました。特にライトゲームにおいてNT-Bシステムで謳われるようなメリットはたしかに感じました。特に高比重PEなど、細く柔らかいラインを使うタックルセッティングで価値がありました。ラインに不要なスラックや角度がつかないことで、ラインへの負担が少なく、ドラグもきれいに効きやすい印象です。またライトロックゲームなど、不意に大きな魚が掛かったり、パワーファイトを求められたりするライトゲームとの相性は良いと感じます。

しかし硬いモノフィラ系のラインを使う場合、また魚の引きに竿が負けることが少ないアジングの場合はまだまだ研究の余地がありそうです。ラインに角度をつけずティップ付近まで緩やかに送る昔ながらのセッティングの方が好ましく感じてしまうこともあります。リール〜バットガイド間でできるラインスラックが良くも悪くも少なくなりますので、この点も好みが分かれます。とはいえ、まだ私が未熟ゆえに見出せていない価値もありそうです。

ライトゲームへの適用を模索する中で、私が主戦場としているパックロッド、特にテレスコロッドに対する特殊なメリットも浮かび上がりました。それは可変レングスのギミック、そしてスピニング・ベイト兼用ギミックとの相性の良さです。これに気づいてから、最近のロッドビルディングでは採用率が急上昇しています。いくつか例をご紹介しましょう。


この竿は、バットのピースを仕舞うことで6’4″のスピニングモードから5’8″のベイトモードに可変するライトゲームロッドです。リアをスケルトンシートにし、フロントをストレートカーボンパイプに直マウントすることで前傾化しています。前傾化によってどちらのモードでもガイドセッティングが自然になっており、無理のないスピニング・ベイト兼用を実現しています。

ベイトモードの時は意味がないかと言うと、特殊ですがちゃんとあります。バット付近で回すスパイラルセッティングを採用しているため、スパイラル位置までのライン角度に対しレベルワインダーの位置が最適化されています。

またこの竿は仕舞寸40cmのモバイルロッドなので、ライトゲームに広く使われます。時には想定外の大物にも対処することになりますので、バットパワーを引き出しやすいセッティングが利点となります。

先に紹介したTULALA製リールシートのメリットとも重なりますが、パックロッドの可変ギミックには大変相性が良いというわけです。


こちらは最新の試作品です。

フロントフードはカーボンロービングによる成形で、リアは技徳VJTSリールシートを大胆にカットして製作しました。傾斜に合わせてリールフットが乗る部分を削り込み、かなりの急角度を与えています。ついでにチタンパーツには陽極酸化を行って焼き色をつけています。わざわざVJTSを使ったのは、ボリュームがあってそれ自体が自然と引っかかりになる形状だからです。強い傾斜とともに、EVA形状とも相まってハーフトリガー的な使用感を実現しています。そう、この竿もスピニング・ベイト兼用です。96MHという強い竿で兼用は珍しいと思います。ギミックとしては1つ上に挙げたテレスコロッドと概ね同じです。かなりイレギュラーな挑戦ですが、色々な知見が溜まって今後に活かされます。ベイトリール好きだけどたまにしか行かないシーバスやサーフでスピニングも一応使えるようにしておきたいなんて理由ではないです。

万能ではない、しかし採用する価値がある

前述した通り、ラインとの相性や、ラインスラックの減少など、好みや用途によってはデメリットたりえる要素もあります。しかし、適切なガイドセッティングとセットで考えればとても面白いのが前傾リールシートです。採用されている竿に出会いましたら、どういった狙いで採用しているのかを感じ、体験してみて下さい。また新たな竿作りのヒントにもなれば幸いです。

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