スパイラルガイドの理想と今 / TULALA前田製作所式の考察と私流セッティング(2020.12版)

2020年12月25日ロッドビルド論

ガイドセッティングのご依頼について

2022.3.4追記

この記事をご覧になってのお問合せも頂くようになりました。この記事はあくまで個人的に某ガイドセッティングを考察し、それを個人的ロッドビルドに応用したものであります。そのため「ツララと同じセッティングにしてくれ」とご依頼頂いても、それはあくまで私が私なりに解釈して組んだ別モノになります。

ガイドセッティングに正解は存在せず、この記事の内容も一つの考え方としつつその時その時での最適解を探していきます。なのでストローHD-DIVの劣化模倣品を作るような仕事になってしまうのは私の本意ではありませんし、私のつたないビルドによって考案者である前田製作所様の素晴らしい着想、研究、権利に泥をかけたくはありません。そのため単にガイドセッティングを真似てほしいというご依頼はお控え頂きたいと思います。

もちろんこの記事を踏まえた上でセッティングの考え方の一つとしては持っておりますので、私なりの別モノのセッティングであるということをご理解頂いた上で様々なご依頼を頂けることは大歓迎です。

ビルドされる方々を中心に、交流や技術交換の輪が生まれることがこの記事の本意です。どうかお楽しみ頂ければ幸いです。

今年のマイブームセッティングはスパイラルガイドでした。タイトルにもある、とあるセッティングを知ったことが大きく、組んだ竿はどれも具合が良かったのです。ただ万能ではない点と、注意すべき点もあります。おそらく今後経験を重ねる中で変わっていくと思いますので、現時点のスパイラルセッティングが持つ良さと注意点、そしてセッティングのポイントをまとめたいと思います。

※あくまで素人個人の見解です。製作者はまた違う考えで作っているかもしれませんし、異なる意見、間違いもあるかもしれません。あくまで素人なりにテストした結果による主観でありますことご了承下さい。


試す気になったツララのスパイラル

まず今年スパイラルを沢山やってみたきっかけというのが、TULALAが開発中のこのツイートを見たからです。

いやはやこの衝撃たるや。こんなことやっていいんだ!でもよく見ると理にかなってる。こりゃリスペクトパクりさせてもらうしかねぇ!

ということで早速ビルド中だったロッドに採用。色々考えて少し簡略化して装着。

スパイラルガイド
バットで回し切る。

このセッティング、なかなか理にかなってると感じました。そして使用感もすこぶる良し。ここから主にライトゲーム用パックロッドでスパイラルを組んでいきました。

この前田製作所セッティングをベースに何本か試したことで、少しメリットとコツが見えてきています。まずはこのスパイラルセッティングによるメリットをまとめてみましょう。

メリット①ガイド数を増やさなくてもラインがブランクに当たらない

ストレートガイドのベイトロッドの場合、どうしてもベンド時にラインがブランクに当たりやすく、それを防ぐにはガイド数を増やす必要があります。同じレングスでも普通スピニングよりベイトロッドの方がガイドが多いのは基本このためです。絶対当たってはいけないわけではないですが、たしかにラインブレイクやロッドのねじれに繋がります。ブランクをラインが跨いでしまうほど曲がれば、一気に折損へと繋がるでしょう。それがスパイラルにすることで、スピニングと同じく当たることがなくなります。なので無闇にガイドを増やす必要がなくなり、ガイドセッティングに自由度が生まれます。もちろん多めに組んでもよし、少なくしてもよし。減らせる、というよりは増やさなくてもよくなる、が正しいかと思います。

※ただし、原案は多点配置を基本にしているかと思われます。それはそれでメリットの大きいものです。

メリット②ラインがブランクに張り付きにくい、糸絡みが少ない

ベイトロッドでラインテンションを抜くと、ラインは垂れ下がってブランクに接触します。この状態は糸絡みを誘発したり、ラインブレイクやバックラッシュの原因になります。そこでスパイラルセッティングにすると、スピニングのようにラインが垂れてもブランクに当たらなくなります。極軽量ルアーをフリーフォールさせるようなライトゲームでこのメリットは顕著です。ジグ単のフォールなどでもスルスルと糸が出ていきます。トップガイドも下向きの方が絡みにくいと言われています。

メリット③ファイト時のブランクの捻れ、笑いを防止

ストレートガイドですと、特にファイト時には魚が走った方向にブランクがねじれてしまい、完全にねじれると俗に言う「竿が笑う」状態となります。ねじれている時点でせっかくのパワーが逃げ、ブランクに負荷がかかり、最後笑ってしまえば急なテンション変化によりバラしにも繋がります。この宿命的問題をクリアするため、メーカーはねじれに強いブランク構造を開発したり、足の低いガイドを使ったりと工夫しています。ですがそれでもねじれはゼロになりません。そこにスパイラルガイドを採用すると、あっさりこの問題が解決してしまいます。ガイドがブランク下側にあれば、魚が走っても大きなねじれは発生しません。

あとはこの部分に付随するメリットとして、スパインを無視できる、相殺できるという意見も聞いたことがあります。実感は持てていませんが、たしかにあるかもしれません。


どういうロッドに向いている?

このようなメリットを持つスパイラルガイドですが、ではどういったロッドに向いているのでしょうか。

1.捻れやすい構造のロッド、ロッドパワーに対し高負荷がかかる釣りに使うもの

わかりにくい表現になってしまいましたが、要は捻れが発生しやすい状況で使われる竿です。

具体的にはまずブランク構造が捻れやすい竿。ソリッド、グラス、捩れ補強のないカーボンロッドなどです。これらの竿の捩れによるパワーロスや破損を避けてくれます。

またアジングロッドやトラウトロッド、バスのUL竿、あるいはビッグベイトロッド、怪魚ロッド、ジギングロッドなど、魚のパワーに対して軽め弱めに作られている竿や、負荷が非常に大きい釣りでの竿にも有効だと考えます。

捻れも反発力の要素の一つであり必ずしも悪ではないと思いますが、ある程度までは抑え込んだ方がいいのは確かです。各メーカー必死になって捻れを克服するために、4軸カーボンやクロステープ、スパイラルX、アラミドヴェール等々の様々な技術を使っています。ですが、基本的にブランクの張りと反発力を生んでいるのは縦方向の繊維です。横や斜めの繊維は基本的に捻れと潰れを抑えるためのものであり、増やしてもロッドの反発力はあまり上がらず重量ばかり増えていきます。スパイラルセッティングをうまく利用すれば、それら重量を増やす補強構造を最小限にしていける可能性があるのです。(捻れだけでなく「潰れ」という要素もありますし、なかなか縦繊維100%とはいかないのでしょうが)

シマノHPよりスパイラルXコア。極論をいえば、潰れ強度が十分かつまったく捻れずに使える竿なら、こんな技術重くなるだけで不要なんです。あくまで極論なので現実的には必要ですが。
シマノHPよりアルティマ5ピース。ピース毎に捻れと潰れリスクの大きさを考慮し、ハイパワーXとスパイラルXの使い所を分けている。素晴らしい。

2.PEラインを主に使う竿、細糸を主に使う竿

スパイラルの弱点の話になってきますが、ラインの角度がリールからトップガイドまで直線にならず、ジグザグに通ることになります。あまり太いモノフィララインを使うと、それが抵抗になって飛距離に影響を与えます。また、旋回させるガイド径かあまり大きいと、巻取り時にラインが偏る場合があります。そのため、小径ガイドで運用できるラインに向いているのです。具体的にはPEラインとはかなり相性が良いです。PEラインの場合、モノフィラに比べて非常に柔らかく弾力もほとんどなく、軽くて風に流されやすいので、モノフィラに比べて小径多点セッティングでガイド間での暴れを抑える方が飛距離も伸びたりします。ジグザグ通ることによる失速もPEですとほとんど感じません。

同じ理由で、細糸を使う竿もスパイラルのデメリットが出にくいため向いていると思います。逆に太モノフィラでの釣り、フロロ20lb以上で遠投するような釣りですと、セッティングに工夫が必要です。設計者の腕が問われます。

3.パックロッドに向いている

パックロッドの宿命として、ブランクが捻れると徐々に継ぎ目がズレてきます。継ぎ目のコミ精度とフェルールワックスなどである程度防げますが、ゼロにはなりません。そこでスパイラルを上手に採用すると、継ぎ目のズレを起きにくくできます。これは使ってみて中々快適です。

ただ若干のデメリットとして、スパイラル部分に設置されたガイドたち(以下、旋回ガイドと呼びます)が収納時に嵩張ります。収納の仕方によっては同梱している他のピースに食い込んで破損に繋がりますので注意が必要です。私は一部の竿では旋回ガイドを遊動にしてます。そうすることで、収納時は向きを揃えたり、使用時もストレートガイドに変えたり、微妙に角度を変えてリールに合わせたりすることが可能になります。この記事では以降、テレスコロッドでスパイラルを再現したものを参考画像で使っていきます。


スパイラルのデメリットとは。それを最小限にするセッティングとは。前田製作所式の考察

スパイラルは決して万能ではないと思っています。上に挙げた太モノフィラの飛距離以外にもいくつか課題があります。実はそれら課題に対して理想に近いソリューションを見せたのが、前田製作所セッティングだと思っています。ここからはスパイラルのデメリットを掘り下げつつ、その対策をどう行なっているか考察していきます。

1.旋回ガイド部では局所的なねじれ・潰れ負荷がかかるその部分ではパワーもロスする。

個人的にこれが1番のリスクだと考えています。ロッドがフルに曲がり込み、旋回しているガイド周辺までベンドした時、旋回ガイドには下図のような方向に捻れ&潰れ方向の負荷がかかります。全体的に同じ方向へ捻れたり潰れたりしている分にはまだいいのですが、局所的に負荷がかかってしまうため、ブランクにかなりの負担をかけてしまいます。もしくは先にガイドが耐えきれずにもげます。

またロッドのパワーは、ガイドがロッドの反発力を受け止めてラインに伝えることで発揮されます。ふつうのスパイラルセッティングの場合、旋回しているガイドはロッドの反発力を使えずブランクを捻ってしまうだけなので、同数同位置のストレートガイドロッドよりパワーが落ちます。最初から狙っていればそれでいいのですが、リビルドにおいてはその点も注意しなければいけません。

スパイラルガイド
ロッドをバット側から見た断面図による捻れのイメージ

上の絵でブランク(黒)が真下に曲がっていったとき、上・下についているガイドは同じく真下に追従していきますが、横向きのガイドはロッドを右回りにねじってしまいます。横向きガイドの部分はロッドに負担をかけるばかりか、本来使えるはずの反発力を逃してしまいます。

スパイラルガイド
スパイラル部を上から見た潰れのイメージ。

上の絵の緑のラインにテンションがかかると、横向きガイドから赤矢印方向に潰れ負荷がかかります。大きな負荷ではないでしょうが、局所的に周りと違う方向の負荷がかかる状態なので、ないに越したことはありません。

ではどうするか。一つの解決策はなるべくバット寄りのブランクが強く曲がらない部分で回すことです。曲がらなければ荷重・負荷はかかりませんので、旋回させるガイドには荷重をかけずただラインを旋回させるだけに徹することができます。

スパイラルストローガイド
TULALA公式Twitterより。バットの根元で回し切り、更に工夫されている。

前田製作所セッティングはまさにそれです。ブランクがあまり曲がらない根元の短い区間で旋回しきっています。これが避けるべき捻れ・潰れを防ぐ方法の一つです。

2.トップガイドまでに複数箇所でラインに角度がついてしまう

意外と知られてないかもしれませんが、多くのルアーロッドにはチョークガイドというものがあります。リールから放出されたラインは、ガイドによって整流されながらブランクに寄せられていき、ある地点からブランクに沿うように一直線になります。その切り替わり地点となるガイドがチョークガイドです。スピニングですと顕著ですが、ベイトロッドにも存在します。

フジHPより。詳しくは画像にリンク貼ってるので見てね

チョークがないセッティングもあるとは思いますが、基本的にはほとんどのロッドにおいて、このチョークガイドで一度ラインに角度がつきます。しかしスパイラルセッティングは、それに加えて旋回ガイド部で3次元的に何度も角度がつきます。これがキャスティング時に抵抗になるので、なるべくこの角度変化を少なく、浅くしたいのです。

スパイラルストローガイド
再びTULALAのTwitterより。前田製作所セッティングは、チョークガイドと旋回終端ガイドが兼ねられている。赤矢印の切り替わり部分がチョークガイド

前田製作所セッティングは、このチョークガイドをバット側に寄せつつ、旋回終端のガイドと兼ねています。こうすることで、下図のように縦方向の角度がつく回数を1回減らしています。チョークガイドさえ抜ければあとはティップまで一直線です。

※旋回終端に2つガイドがついています。正確にはその2つのうち穂先側がチョークガイドと理解しています。横向きガイドをチョークガイドとみなす方もいらっしゃいますので用語についてはこだわらずお読み下さい。

スパイラルガイドのセッティング
上が通常のスパイラルガイド。ラインは2回折れ曲がる。下が前田製作所式。折れ曲がりは1回で済む。

横方向の角度についても、まだ左右のブレが収束しきっていない段階で回してしまうので、ラインにつく角度も浅く、整流効果も兼ねています。(ただし角度を浅くしようとガイドを大きくしすぎるとスプールへの巻取りの偏りに繋がったりします。)

スパイラルガイドのセッティング
横方向のライン角度が小さくて済む

3.旋回ガイドになるべく荷重をかけたくないが、ロッドパワーも使いたいジレンマ

1に記した解決策で、ある程度旋回ガイドにかかる負荷を減らすことができています。しかしバットだって曲がらないわけではありません。フルベンドした状態で横向きのガイドに荷重がかかれば、大きなリスクを竿に与えます。また逆に、旋回部分のガイドで竿の反発力が使えないともったいなくもあります。そこで前田製作所のセッティングは2つの工夫を施しています。

スパイラルストローガイド
かなり緻密なガイドセッティングです。

このセッティングでは、ベンド時に仕事をさせるガイドとさせないガイドを明確に分けています。まずバット側から1つめと2つめはラインの整流が目的(以下、整流ガイドと呼びます。)で、ガイドの上端付近をラインが通るようになっています。これによりフルベンド時もこれらのガイドにはラインが接触せず荷重がかかりません。その次3つめの90°回した横向きガイドも同様で、上端付近を通していますので荷重は基本的にかかりません。これらは意図的に仕事をさせないガイドです。

4つめが旋回終端のガイドになります。ここはブランクにラインが当たらないようにセッティングするとある程度大きめのガイドになるので、ラインを下端に当てようとしても当たりません。仕事を「させられない」ガイドになります。このままでは以降の穂先側ガイドでしか荷重を受け止められず、バットパワーを有効に使えません。そこで前田製作所セッティングは、この旋回終端ガイドの直上にもう1つ小さなガイドを設けています。これがバット部で荷重を受け止める「仕事をする」ガイドになります。一見キテレツで複雑なセッティングですが、このような目的で理にかなった配置がなされています。

バット付近ならガイド数が増えても重量バランスはそんなに悪化しません。ここまですれば、PEを基本とする限り、糸を通すのが大変とか嵩張るとか釣り中以外のデメリットを除けばほぼ理想的なセッティングになるといえます。


私流解釈による実践例

1.細身のフルソリッドライトゲームロッド

スパイラルガイド
フルソリッドいいよね。かなり高足のリールでこんな軌道。スティーズAIRあたり載せるとバットガイドのセンターやや上付近を通る。
ジグザグも最小限

ライトゲーム全般用。初めて組んだスパイラルです。まだ手探りではありましたが、フルソリッドはバットでも径が小さいので、横方向のジグザグが非常に少なくできました。基本トルザイトで、バットから2つの整流ガイドは大きめ、横向きガイドは小径、角度がつくラインによって糸鳴りしないようたまたま余ってたガイド使った結果SiCに。パワーがある竿なので、補助ガイドがなくてもフルベンド時に旋回終端ガイドの下端に軽く荷重かかる程度で十分でした。結果、いくらかシンプルに仕上がりました。

2.アジング用ベイトロッド

スパイラルガイド遊動式
これも高足のEON5601Cを載せた状態。竿の詳細は冒頭の記事のリンクより

こちらはアジング用。バット側から2つは遊動になっており、リールのレベルワインド位置によって角度を微調整できます。整流ガイド数も減らしたかなりシンプルセッティングですが、スパイラルのメリットは十分活きています。

3.パックロッド延長ピース

スパイラルガイド
あえてガイドに仕事をさせない。あえてね

これは依頼品で既存のパックロッドを延長する延長ピースとして作ったものですが、バットから満月のようによく曲がるテイストを目指していましたので、敢えて補助ガイドも使わず、追加ガイドになるべく仕事をさせないようセッティングしました。わざと各ガイドに最小限の荷重しかかからないようにして、元々の竿のバットガイドで受け止めるようにしています。ストレートガイドのままこれをするとブランクにラインが当たりまくるので、ちょっとイレギュラーですがうまく応用できたと思います。

※画像だと横向きガイド部に若干負荷がかかってますが、納品前に少し調整してます。

4.超小継テレスコロッド

スパイラルガイド

最後はテレスコ。全ガイドが回りますので、リールに合わせてセッティングできます。ストレートセッティングにも設定可能。遊動ガイドは径があまり選べないので、手曲げ角度調整でセッティング出し。あくまで継ぎ目への等間隔配置なのでベストセッティングとはまでは言えませんが、しっかりメリットは得ています。


セッティングの注意点

1.実際に複数のリールを載せてラインを通しながら位置出しする

机上で最適な位置を出すのはなかなか難しく、実際にラインを通した状態で、竿もできるだけ曲げながら位置決めすることをお勧めします。盲点としてはリールによってレベルワインドの高さが異なりますので、できれば複数台載せて合わせると良いです。TWSとそれ以外でも変わってきます。またあまりバットガイドをリールに寄せすぎると、レベルワインドのリング下端に当たってしまいます。レベルワインドもガイドの1つと思ってセッティングしましょう。

2.基本はラインがガイド上端をかすめるように等間隔で90°ずつ旋回。ただし現物合わせで

短い区間で回しますので、基本は90°旋回です。また90°にすることで、横向きガイドにわずかでもファイト時に捻れを起こさせないようにできます。コツとしては、なるべくどのリールでも旋回ガイド上端付近をなめらかに通るようにします。また各旋回ガイドがなるべく等間隔に並ぶようにします。間隔が大きく変わるとその部分では横方向のライン角度がギクシャクして抵抗になってしまいます。ただあくまで基本なので、実際になるべくスムーズに通る位置が出せれば必ずしも90°や等間隔である必要はありません。

遊動ガイドに抵抗がなければ、遊動ガイドにしてリールに合わせた微調整をかけても良いと思います。どうせ基本的に荷重はかけませんので、使用中に回る心配もあまりありません。

3.横向きガイドは小径低足がおすすめ

なるべく横向きガイド部分はブランクに近い方がライン角度もつかず良いと思います。必然的に小径低足です。上に書いた竿のようにSiCである必要は特にないかと。トルザイトもブランクと干渉しなければ問題ないです。最近はここだけはSiCが良いように感じています。常に角度がついてリングに接触するので、糸鳴りの原因になりえます。形状的には本当は縦方向に少し余裕があるといいので、大きめの傾斜ガイドをつける手もありますが、抵抗は若干増す感じがしています。横長の偏平リングとかほしいですね…。

その他のガイド径については諸説ありでしょう。どのガイドをチョークガイドと考えるかにもよってきますし、整流ガイドについてはベンド時に荷重がかかるように置いてもいいですし、微妙なところはビルダーの考え方次第です。

4.バット側の整流ガイドの角度で特性が変わる

バット側の回す前の整流ガイドの角度はいくつか考え方があり、メリットデメリットがあります。回す方向と同じ側に少しだけ倒すと、横向きガイドに入っていくライン角度が浅くなり、よりスムーズな放出が得られます。しかしデメリットとして、スプールに巻かれるラインに偏りが出やすくなります。少し大きめのガイドを使っても同じような状態になります。

スパイラルガイド
同じ方向にちょい倒し。ジグザグが少なくスムーズ

逆に回す方向と反対に少し倒すと、スプールの偏りを防止することができますが、抵抗はかなり増します。

スパイラルガイド
逆向きちょい倒し。わかりにくいかもですが、バットから1つめのガイド部と2つめのガイド部の角度がキツくなってます。

このへんも微妙なセッティングなのですが、今のところは各リールサイズに対応できる範囲で小さめの整流ガイドを配置しつつ、あまり飛距離を出さずかつ軽いルアーを使うライトゲーム用ロッドでは偏りが気にならないのでスムーズさ重視でやや回す方向と同じ側に倒し、重めのルアーで遠投も行う竿ではセンターに置くようにしています。ただ見た目の秩序という部分も大事なので、中途半端な倒し方は不恰好にも見えて悩ましいですね。

なお前田製作所セッティングではこのガイドが逆付けされています。理由は擬似的に横偏平のリングを使ったような状態を作り、レベルワインドに合わせて左右方向の自由度は持ちつつ、上下方向の暴れを抑制してスムーズに旋回部へ入っていくようにするためと理解しています、本当のところはわかりません。

細かい部分については以下のブログが素晴らしくまとめられていましたので、こちらを読んで頂ければ十二分です。(手抜き)一部違う意見もありますが、概ね近い意見です。


キャストが逸れる?

ここからはスパイラルに関するよくある懸念や疑問について。キャストが狙った方向から逸れるという意見を良く聞きます。これは半分本当だと思います。通常のストレートガイドとはキャスト時にブランクが捻れる方向が逆になります。あくまで予想ですが、普段慣れているストレートガイドの捻れ感と捻れ方向が変わることでそう感じるのだと考えています。ストレートだから捻れず真っ直ぐ振れるということはないのです。無意識にその捻れに順応していた体が起こす違和感ではないでしょうか。なので多くのロッドを振り分けるボートのバス釣りなどでは問題になるかもしれませんが、慣れの世界だとは思っています。この捻れ感については、スパインとの関係がむしろ大きいと思います。

右捻り左捻りは関係ない?強いて言うなら…。

個人的には正直どっちでもいいと思います。フッキングパワーに関して捻り方で差が出るとの指摘がありますが、実釣においてはフッキング方向は色々な方向になってしまうと思います。また上記のバットで回す前田製作所式スパイラルなら、基本的に旋回ガイドはフッキングパワーに影響しません。(させてはいけません。)なのでどちらでも良いと思います。強いて言うなら、シェイク時のタックルの重心をわずかでも下げたいということと、ラインの弛みがブランクに絡むリスクを減らそうと考えたら、ハンドルのある方向に回した方がいいかもしれません。あとはキャスト時ですと、右投げで左旋回ならテイクバック時に旋回ガイドにも荷重がかかるので飛距離がアップする…かも。この時は他の穂先側のガイドはすべて捻れながら反発力を受け止めているので、変な負荷にはならないと思います。右投げ右旋回ですと旋回ガイドにはキャストパワーに繋がる荷重はかかりませんの。(むしろ逆方向)

ということで右投げ左巻きなら左旋回、右投げ右巻きならどっちでも(ライン弛まない巻物なら左旋回、撃ちモノなら右もいいかも)。つまり利き腕と逆に旋回でだいたい潰しが効くかなぁ、といった感じで今は考えています。

スパイラルガイド
左絵:ラインスラックを出した時、横向きガイドがハンドル側ならブランクに絡まない
右絵:キャスト時の正面側に回していれば、横向きガイドが荷重を受けてキャストパワーに寄与する。逆だと荷重がかからない
スパイラルガイド
一応これで両方試しましたが、今のところは有意差が感じられません。とはいいつつ新規で組むなら上記理由で利き腕と逆に回します。

太ライン用のセッティングは?ひねり角度はどれくらい?

ここまでご紹介したセッティングは、太いモノフィラになるとデメリットが大きくなると思います。その場合は一般的なスパイラルセッティングが良いと思いますが、私自身があまりモノフィラを使わないこともありまだまだ研究中です。とりあえず前田製作所式のように旋回部の負荷を消すことはできないので、逆になるべく角度を浅く、負荷を分散する方向で考えます。そのため角度は45〜60°くらいずつ旋回で組むのが良さそうです。なるべく長い距離でじっくり回したいですが、よく曲がるベリー部に入る前には回し終えたいところです。

まとめ 万能ではないが優れたセッティングです

優れたセッティングであることは間違いありません。でも万能ではないと思います。ブランク製造技術も進化し、低足多点ガイドにより捻れの問題は減りつつあります。回さずに済むならならその方が見た目は美しいです。それでもスパイラルによって生きる部分は確実にあるので、ビルディングの手駒に加えられてはいかがでしょうか。