【試作品】超小継スーパーバーサタイルテレスコロッド Piccolo Rivoluzione UGT-BX14
2023年、個人ビルダーの夢の1つである、オリジナルブランクスによるロッド製作を行いました。
ここ数日はフェス関係の投稿を矢継ぎ早に続けましたが、その竿も参考としてフェス(土日のみ)に清澄白河釣具製作所様のブースを借りて展示します。
↓フェス情報は下記から!↓
超小継テレスコの可能性
この竿は一昨年末から設計を行い、昨年に製作・テストを行ってきました。先に清澄白河釣具製作所様の竿を投稿しましたが、実はこちらが先祖ともいえる竿です。
2020年、小技小物カスタムから始まった私の超小継テレスコの開拓でしたが、今ではトラギアポケビッツなどの市販品も出ていて、パックロッドも多様性の時代となっています。
しかし実際に組んだり使ったりする中で、まだまだ開拓の余地が多く残されていると感じました。
超小継は当然ながら強度、感度、軽さでワンピースに劣ります。しかし設計次第でそれを解消し、逆に超小継でしか成し得ないメリットを引き出せないだろうか。
それを具現化するには、条件を満たした理想のブランクスを得なければなりません。
他の継ぎ方式と違って市販品のキメラ化では限界がありますし、ベースにできる竿も前述のポケビッツくらいしかありません。(用途に合っていれば、ポケビッツも大変良いベースです。)
そんな時、某国産工場が個人オーダーも請けてくれるという情報を入手しました。
早速問い合わせたところ、私の設計思想をご理解下さり、予算もなんとか内臓は売らずに済む範囲…。
もうやるしかない!理想を詰め込んだ超小継テレスコブランクス製作を!
オリジナルブランクスによるロッド誕生
そこからしばらく設計作業です。既存のマンドレル(ブランクス材料を巻く芯)を使えるような内容ではないので完全新規製作となります。
思い描く理想を詰め込んだ結果、継ぎ数は脅威の14。14本ものマンドレルとブランクスの寸法・素材を、過去のつたない経験から検討します。
数日間悩みに悩みましたが、テレスコの神様が少し力を貸してくれたようです。
出来上がった設計案に、工場も「いい設計だと思う」と後押ししてくれ、製造開始。
出来上がってきたブランクスは、なんと試作一発目でほぼイメージ通りのアクションが出せていました。
いくつか組み上げにも新しい試みを盛り込み、完成したのが「超小継バーサタイルテレスコロッド Piccolo Rivoluzione UGT-BX14」です。
全長7ft ※変更可能 仕舞寸24cm
継数14本 重量104g キャスト可能重量2g〜1.5oz 参考リフト重量3kg
このスペックで、投げも巻きも操作もしっかりこなせ、小物を楽しめる柔軟性、大物と戦えるパワー、そして驚きの感度を同居させた夢のロッドです。
ブランクス設計思想
超小継テレスコの宿命として、極端なハイテーパーになることが挙げられます。
超ハイテーパーで強度を出そうとすると、バットが異様に太く曲がらない棒竿になります。
しかしそれを逆手に取ったのがこの竿です。
素材をSグラス(バット~グリップのみ24tカーボンコンポジット)にすることで、太くても曲がる丈夫な竿にし、逆にグラスのダルさ、小継の重さをテーパーで打ち消しています。
この思想に基づきある程度の全長を確保することで、負荷に応じて仕事をするセクションが移行し、繊細な穂先とパワフルなバットをスムーズに繋いだ竿となるのです。
その狙いのもと設計したのですが、最初に決めたのはリールシート接着部の外径を17mmにすることです。
ここを基準に前後の径を吟味することで、完全アーバーレスでFuji製リールシートを直接接着でき、軽量高感度な構造が作り出せます。
1ピースあたりの長さは20cm等長に設定しました。
ガイドは全て各ピースの先端に固定しており、ガイドを目印に竿を伸ばしていくだけで釣り場での準備が完了します。
準備が簡単なだけでなく、使用中にガイドが回ってしまうというテレスコ特有のトラブルも減少させることができます。
仕舞寸だけを考えると、穂先側にかけてガイドの接着幅だけ長くしていく方が有利です。
しかしそうすると穂先にいくにつれてガイド間隔が広がってしまいます。間隔を等長にした多点ガイドセッティングに自動的になるよう、ブランクスも等長なのです。
グリップ部はより短い10cmのピースを3連結にすることで、トリガーからエンドまで34cmもの長さを確保しています。
グリップ部をリールシート下に仕舞い込みつつ、17mmから径がさらに拡がることで、コルク・EVA無しでも握り心地の良い太さを出せています。
ハイテーパーにより重量バランスも最適化され、反響空間も大きく確保され、グラスでも感度を出せるのです。
またこのブランクスは、穂先のみ別素材で用途により組み替えられるようにしています。目的に応じてより硬く、柔らかく、先調子に、といった調整が可能です。
更に、ピースを全て使わず途中まで使っても成立するようなアクションですので、よりショートな仕様も同じブランクスで実現できます。
組み上げの特徴
①チューブラーβチタンティップ
ティップはオリジナルの多段チューブラーβチタンショートティップを試験導入しました。
メタルティップは不意の穂先折れリスクをほぼゼロにできるので、テレスコと大変相性が良いです。
更にチューブラーチタンを使用したことで、カーボン並の軽量を実現します。
前述のブランクス本体の素性と相まって、触ってもらった友人が「えっ?」と変な声を上げるほどの反響感度を得ました。 そのあとで「これ、グラスだよ」と伝えたら更に変な声を出していました(笑)
語弊を恐れずに言えば、感度特性だけでいえば市販アジングロッドと戦えるレベルであると自負しています。
※長期テストにより、クセのつきやすさという弱点が見えてきました。現在は通常の形状記憶チタンソリッドに換装し、グリップも握りやすさや生産性を優先した形状にして、感度はやや低下しています。
それでも十分良いと言っていいレベルだとは思います。形状記憶のチューブラーもっと安くならないかなぁ…。
②グリップ構造
リールシートは当初スケルトンシートの予定でしたが、トラウト用アルミウッドシートが格好良く重量もそこそこだったので、それのアルミ部のみ切削して使用しました。
更に形状記憶チタンシャフトを橋渡しすることで、リールフットの位置決めをしつつ、前後リールシート・リール・ブランクの噛み合わせを強化して振動を拾いやすくしました。
これも現在はテストのため一旦通常のスケルトンシートに戻していますが、性能は良かったです。
③ガイド構成
前述のとおり全てのピースの先端側に固定配置しており、バットまで全てのピースのパワーを存分に使うことができます。
過去のテレスコ作品と同様に、C-IMガイドのフットを削り込み、ギリギリまで仕舞寸を抑えています。
またストレートセッティング・スパイラルセッティングどちらにも対応し、スパイラルのさせ方も自在です。
用途と使用感
「旅先で、1本でどこまでできるか」ということを突き詰めています。
一番気持ちよいのは、バスのML~M竿で使うようなルアーになります。
穂先は先径1mm以下の繊細なもので、バットがゴツすぎて気持ちよくはないものの1gジグ単なども操作感は十分得られます。
掛かればアジなどでもそれなりに追従するので、十分楽しめます。
一方、ベリーから下は強いので、投げ方次第では2oz以下のビッグベイトまで射程範囲です。
グラスゆえ巻きモノとの相性は良いですし、低負荷ではまるでXFアクションの竿のように曲がり感度も十分なので、操作系の繊細な釣りもこなします。
実際に、ジグ単アジングから、羽根モノナマズ、パン鯉までこの竿でやっています。
心配される強度ですが、怪魚ロッド並とは言わないものの相当あります。
私の耐久テストでは、50upのバスや3kg級のナマズを抜き上げまでしております。
友人がタイに釣り旅行に行った際には、バラマンディに使用して「驚くほど簡単に魚が寄ってくる」との評価を頂きました。
グラスならではの特性ですね。
デメリット:割り切った点は?
もちろんデメリットもあります。
最大のデメリットは、バットの太さによる振り抜きの空気抵抗です。
実は、この点は設計にあたり最初から捨てていました。
旅先の懐刀として使うこの竿でロングキャストはそこまで繰り返さないと想定したからです。この割り切りによって得られるものが多く、また我慢できる範囲と判断しました。
実際使用してイライラするほどの違和感はありません。感度と軽快感がそれを補ってくれます。
改善するなら並継・逆並継にするか、超高級素材を用いて多少緩和するなどしかないので、それは私がする仕事ではないでしょう。
Piccoloの今後と販売について
現在は多魚種テストをくり返しつつ、別素材のテストを続けています。
仕様が煮詰まったら、少量だけ販売もしたいと考えております。
マンドレル・設計代の回収をしようとすると、とんでもない金額になってしまうので、面白いと思って頂ける方にほぼ材料原価でご相談したいと思います。
ご興味のある方は、X(旧Twitter)かこちらのブログ問い合わせ欄からご連絡頂ければ幸いです。
小継の探求はまだ始まったばかりです。
ディスカッション
コメント一覧
こんにちは。以前小技小物の改造記事を拝借させていただいた以降、新しい記事も拝見させていただき、数々のアイディアや精力的な活動に感銘を受けています。
以後、ロッド製作に関して長文になりますが雑談として…
私も超小継かつテレスコのロッドを作製する時はグリップ長を仕舞以上の長さで確保するところに頭を悩ませており、こちらの過去記事ではティップガイドをそのままグリップエンドに装着するという合理的なアイディアで解決なさっていたのが印象的でしたが、最近中華ロッドでは下記画像のようにグリップのみ並継竿と同様の機構で継ぐ(テレスコ+一部並継)という方法の竿をみつけました。
https://i.imgur.com/ZHij5RS.jpg
これなら見た目もスマートになりそうですよね。(当方はコルクブランクの内部に止めネジを埋め込んで、プロックスのエクステンションバット機構のようなものにしてみたのですが、バットが重くて…)
それこそ昔のロッドのようにフェルールを介してブランクスとグリップを組合わせて使う、と言ったようなブランクスとロッド(もしかしたらベイト・スピニング共用パックロッドもいけるか?)のバリエーション展開がうまく行ったら出来そうな気がしています。
PS.
当方は最近maxcatch社のミニテンカラというグラファイトのロッドが、パックロッドには珍しい白ブランクスなので自作ロッドのベースに重宝しています。ホワイト塗装済みのチタンティップと合わせてもなかなか良い感じですね!
コメントありがとうございます。ご無沙汰しております!
テレスコのグリップ長については様々な試みが行われていますね。
共有頂いたロッド、実はAliExpressのカートに放り込んであります(笑)
こちら、おそらく(というか確実に)バリバスグラファイトワークスの安達氏の源流ロッドを模倣したものと思われます。
氏のものは転売価格でなかなか入手できないですね。
私はグリップ部分もテレスコさせる方法での解決が最近のマイブームです。
シンプルで手早く伸ばせるのがメリットですが、折れた時の修理が大変というデメリットもあります。
maxcatch社の竿は気になっておりました!
流石にアンテナが広いですね!私もあの竿はバリバス安達工芸のあのパックロッドのオマージュだよなあと感じていました。
maxcatchはAmazon購入した際にはアフターケアが悪くなかったのですが、もう少し気軽にパーツ注文できるといいのですが…
アントマーチ的な並継ロッドも、今ではパックロッド用にカットされたブランクスもチラホラ手に入るようになって来ましたが、やはり窯元に注文できるのが一番強いですねえ。
今後のご活躍も大いに期待しております。