【釣りフェス’24展示】仕舞寸15cm未満 超マイクロパックロッド

2024年1月18日ロッド作品

さて、先のブログでご案内しました2024年釣りフェスについて、開催直前ということで簡単にロッドの設計思想などをご紹介しておきたいと思います。
まだまだ設計・試作を繰り返しておりますので、暫定ということでお捉え下さい。

↓経緯や清澄白河釣具製作所様の情報はこちらから↓

要求スペックと課題

要求スペックは下記の通りです。
・仕舞寸14cm級
・全長90cm前後のシングルグリップ
・ライトゲーム、雑魚を中心にした万能ルアーロッド:ルアーウエイト1〜5g程度
・薄く仕舞える小径グリップ
・継ぎ方式は現時点では絞らず、テレスコ、並継、逆並継すべてを検討

この常識外れのスぺックにおいては、普通の竿では起きえないいくつかの課題が発生します。

①強度の問題
継ぎ目が非常に多く、あまり継ぎしろも長く取れません。
継ぎ目が増えると、設計上の制約が増えて肉薄になる箇所が出やすく、強度確保が難しくなります。

②アクションの問題
ただでさえ継ぎ目が非常に多い中で、極軽量ルアーを扱えるしなやかさとタメ、不意の大物に対応できるバットパワー、それらを90cmという短さの中で綺麗につなげなければなりません。
90cmというのは短めのタナゴ竿クラスです。しかしこれはルアーロッドで、キャスト動作が入ります。
リールはベイトなので、竿に重みを乗せてしっかり振れないといけません。
仮に狙いがハゼであっても、急に鯉がかかるかもしれません。
目の前に50upのバスがいるのに投げられない、なんてことも避けなければなりません。

③グリップの問題
シングルグリップで、かつ外径は19mm未満の小径です。
この中でしっかりと握れるグリップを実現する必要があります。

試行錯誤

これらをまとめて解決すべく、色々な可能性を模索しました。
まず材質はこれまでの経験を活かしてグラス+チタンティップの構成としました。

継ぎ方式ですが、逆並継を14cm毎に繰り返してしまうと、各ピースを極端なハイテーパーにしないとアクションが成立しません。
それでは製造難易度、継ぎ目の摩擦不足、美観の問題など課題が多くなってしまいますので、並継かテレスコの2択となりました。
これであればある程度設計寸法を共用して、近い調子で2種類の継ぎ方式をつくれるとも考えたからです。
印籠継は初めから却下です。

最初のプロトは、下記の自作テレスコの設計経験を活かしつつ無難な並継で設計しました。


しかし、私は上記の3つの課題を舐めていましたようです。
市販化前提ということもあり、極端な肉薄設計は避けていきましたが、出来上がったのは狙いのようには曲がらないゴツい竿でした。
これはこれで用途次第…というものにはなっていますが、到底求めている用途には合致しません。
研磨、ガイドセッティング、穂先の調整でとりあえず使えるレベルにはしたものの、今回は小継の神様に後頭部を殴られた気分でした。

これはこれで良い竿になるブランクスだとは思いますが・・・。

初回プロトを触りながら依頼主様と相談しました。
SグラスからEグラスなどへの素材変更や、寸法の微調整、一部に逆並継を挟むなどの改善方法はあったものの、小手先の変更では理想に近づかないでしょう。
これまで存在しない竿をつくるチャレンジです。今一度ゼロから考え直そう、そう決めました。

これまで触ってきた色々な竿の設計を見つつ、逆に頭を空っぽにして考えつつ、断面二次モーメントの計算を繰り返しつつ、しばらく悩みの時を過ごしました。

ハイテーパーにはしたくない。硬く薄くなってしまう…。
ローテーパーにしたい。できれば細身肉厚でタメが効き振り抜きも気持ち良くしたい。でも肉厚にしたら結局太くなる…。
継ぎ目がなければ…いや継ぎ目があるから意味がある…。
あちらを立てればあちらが立たず。外径に対する制約が大きすぎる…。
うぅ…うぅ……。

…。

…。

「…並継だったら内径のテーパーは自由じゃね?」

並継の神様が降りてきてくれました。

急いで断面二次モーメントを再計算し、工場に相談したところ、しばらく検討したいとのこと。
しかし数日後には「こんなのやったことないけど、マンドレル屋も理解したし、なんとか可能と思われます!」とのお返事!
やった!お願いします!

ということで極めて特殊な設計を与えられた第2弾プロトは、工場がいつもと勝手が違うことでやり直しを挟むなど苦労はしたものの(無理言って本当にすみません!感謝しあかりあません)、無事に完成しました。

フェスにお持ちするのは、この第2弾プロトです。

おそらく史上初?リバーステーパー設計

バットまで細身ですが、8本継の並継ロッドです

特殊な設計の正体は、各ピースが「外径はバット側がほんのわずかに細い逆ローテーパー、内径はバット側が非常に肉厚で穂先側が薄めの逆&超ハイテーパー」というものです。
これを実現するため、マンドレルは穂先側を太くして通常と逆向きに使用して頂きました。
外径のわずかな逆転だけなら一部の小継竿で観たことはありますが、このような複合設計は見たことがありません。

言葉で説明するとわかりにくいので、図と写真でご説明します。

あるピースの穂先側
バット側
左が穂先側、右がバット側です。わずかにバット側が細いのです。

外径は各ピースともバット側が穂先より0.1mmほど細くなっていますが、見た目にはほぼストレートに見えるかと思います。
継ぎ目のメス側は強度に不安のない範囲で薄めに仕上げており、多段で並継接続していくと、視覚効果もあって竿全体ではふつうのローテーパー竿に見えます。
細身のままバットまで繋がりますので、バット外径は7mm未満に収まって繊細さを失わずに仕上がっています。
また継ぎ目のオス側外径はほぼストレートに近いテーパーなので、短い継ぎしろでも十分な摩擦を生み、抜けにくくズレにくくなります。

しかしそのような設計で肉厚を一定につくるとと、歪な曲がりになってしまいます。
そこで内径はバット側を超ハイテーパーにして肉厚にしています。
太さでなく厚みでアクションを出しているのです。
これはオス側に手厚い補強をしなくても強度が確保できるため、補強を最小限にして全体を細身にすることにも繋がり、また短い全長のデメリットを改善させる適度な重さとタメ、リフティングパワーをもたらします。

結果、このようにスムーズに曲がり、曲げ込んでも折れることなく、1gの重みを乗せられ、竿ドラグで大物にも耐えられる調子が実現できたと思います。
 ※暫定の材質設定はSグラスで、穂先は形状記憶チタンです。

ガイド・グリップ等はテスト用です。スムーズに負荷が移行し、バットは残ります。
手の大きさと曲がり具合を比べてください。推奨はしませんが、ある程度の無理が効きます。キャスティング強度テストでは何と20gまで投げています。

拡張性

今回の設計では、リールシートもリール専用設計で可変ギミックなどはありません。
しかしこの設計も、自作テレスコと同様に拡張性を意識しています。
現在は全長100cm未満ですが、同様の設計思想のままバット側を継ぎ足していけば、より長い全長にも対応しています。
なのでリールシートを変更し、より長めで一般的なルアーロッドも製作可能です。

グリップ

グリップはまだまだ検討中です。
仕舞と太さを両立できるような異形グリップも製作しておりますが、シンプルな形状も魅力的で、色々なご意見を頂きたいと思います。

これはシンプルなラッパ形状。リールが小さいので縮尺がバグります。

このような成長させてくれる機会を頂き、本当にありがたい限りです。
とはいってもまだまだ試作改良を続け、より良いものを目指します。

どうぞご指導ご鞭撻の程宜しくお願い申し上げます。