【依頼品】Jetsetter60C 2種類の延長ピース(本体レビューも有り)
性能重視のパックロッドが増えた中、釣り味重視の楽しいパックロッドも出てきています。Jetsetter60Cはそんな遊び方向の名竿です。
![JetSetter60C](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/675C2DA6-95B8-4C23-ACC8-4249F7D32983.jpeg)
http://jetslow4wear.com/products/detail223.html
Lパワー、もしくはUL+といったかなり柔らかい竿、いわゆるベイトフィネスロッドに属します。が、実は繊細なワーミング竿というよりは小型プラグ寄りの竿。面白いのは、昨今バットパワーを誇る竿が多いのに対し、60Cはバットどころかリールシートからグリップエンドまでぐいぐい曲がります。細身のECSリールシート、フォアは短くシンプルに、セパレート部も長くとって、細身のブランクを貫通させている。これは狙って作ったテイストだと思われます。ブランク自体も、逆並継と印籠継を組み合わせてバットまで細〜く仕上げています。しかし肉厚なので、見た目以上にパワーのある竿です。
結果としてベイトフィネスでありながら1/2ozくらいまでは振れる懐の深さ、竿のたわみを活かしたプラグ操作、そして魚を掛けてからは満月のような曲がりを楽しみつつ大型魚も浮かせてこれる、という大変楽しい竿になっています。かなり太めのラインも許容しますし、バス用のベイトフィネス竿を想像して買うと肩透かしを食うと思います。しかし繊細な釣りができないわけではないですし、何より本当に面白い。私も一時期ハマっていた竿です。今はタックル整理で手放してしまいましたが、また使いたい竿の一つです。
さて、今回はその60Cの延長ピースの製作依頼を頂きました。またその後、それをご覧になった方からも同じご依頼を頂き、短期間で2種類の延長ピースを作ることとなりました。言葉にすると2つは同じ依頼です。ですが完成したピースは全くと言っていいほど違うものになりました。そのあたりを記事にしたいと思います。
<ご依頼① 北海道M様>
最初のご依頼はM様。SNSで存じておりましたが、魚種を問わず釣りまくるガチンコアングラーさんです。「少し長さとパワーが足りないので、そこを補いたい。」ということでした。コスメはお任せコースでお請け致しました。
さて、延長ピース製作は何度かやっていますし、自分でも使ったことある竿なのでイメージはできていましたが、難しい点が2点あります。
まず1つはコスメの問題。Jetsetterシリーズはかなり個性的なコスメが使われており、同じ色はおそらく作れません。色々考えた結果、中途半端に似せるより全然違うデザインにして、トーンだけ合わせる方が良いだろうと判断しました。
そして最大の問題は、グリップまで曲がるこの竿の特性です。当たり前ですが、延長ピースはバットより強くしないといけません。そうすると今度は曲がるグリップに対し強くなりすぎてしまいます。このジレンマをどう解決するか。かなり悩まされました。
M様の使用用途を考えた時、かなりハードに使われる上、感度もほしい釣りをされています。60Cは感度を求めた竿ではありませんが、長くなることで感度は基本的に悪化します。ゴリ巻きできるパワーもほしいでしょう。なので多少バランスを犠牲にしても感度と張りのあるピースを作ることとしました。
![ロッドブランク選び](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/40CB2A06-C32E-4BB4-9631-B22D730B35AA-1024x576.jpeg)
選んだのは1753R-5でも使ったMHXの怪魚向けブランクのベリー部分。やや薄肉ハイテーパーですが、棒ではなく曲がりもあります。これを両側印籠継で製作。穂先側のフェルールは廃ブランクを丁寧に調整してコミ合わせ。グリップ側は内側に他の廃ブランクを削ってコミ合わせしたものを接着し、グリップのフェルールに合わせました。延長はバランスを考えて欲張らず1ftに。
![JetSetter60C延長ピース](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/C6D5CDE3-98EF-426D-8055-9F6D2F5A795F-1024x576.jpeg)
デザインはブランク無塗装で重量抑えつつ、渋ハデに。やはりアワビ。アワビは全てを解決する…。
この時点でブランク自体の曲がりはイメージ通りに。しかしやはりグリップの曲がりに対しバランスがちょっと…。またグリップのフェルールにかかる負荷も増すはずです。M様と相談し、グリップのフェルールを少しだけ強化させてもらいました。ただしこういうのはやり過ぎないことが大事。薄めの廃ブランクをフェルール内に挿入・接着しました。純正状態で使っても違和感のない程度。もちろん見た目も変わりません。
最後の工夫として、ガイドはダブルフットですが敢えてシングルラッピングで仕上げています。ハードな使い方をされた時に、ブランクが逝くより先にガイドが取れてほしい。現実にどちらが先に逝くかまではコントロールできませんが、全損を避けたいという思想です。
というわけで完成!無事にお手元に届き、早速使って頂きました。
![](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/0D633742-77EC-4545-9264-95EAFA3DCBF7-768x1024.jpeg)
![](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/7A3FE7A6-BBA4-4FC0-B14B-9E20F4912692.jpeg)
やはりガチンコで使われてました(笑)気になる点も含めてフィードバックお願いしたところ、やはりグリップが少し負ける感じはあるようです。しかし飛距離UP、感度維持、パワーUPと狙いは達成できたようです。何より気に入られたとの評価が嬉しかったです。
何かあったら作り直しますので、これからもガンガン使ってやってください!
<ご依頼② 茨城県M様>
北海道M様のをご覧になったこれまたM様よりご依頼。ただし用途はフィネス系で、元の延べ竿感を残して使われたいとのこと。さて、こうなると前回の設計とはかなり変わってきます。色々考えた結果、ブランクも新たに探し直しました。
![ブルースレッド](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/133407C8-708B-45BD-BBD6-3E7B890D913B-1024x576.jpeg)
なるべく細く仕上げ、パワーは肉厚と粘り感で生み出すようにするため、穂先側は逆並継、グリップ側は印籠継という変則方式に決定。そしてちょうど良い材料がやっと見つかりました。コンバットスティックタイラントのベリー部
![ロッドブランク選び2](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/602A42D6-417C-4A11-B9AF-3AB949AEA2EB-1024x576.jpeg)
延長は1ft。コミは慎重に調整し、両側とも抜く際に「キュポン!」と音が鳴るところまで仕上げました。これを塗装プラス一皮剥いて、カーボンそのもののパワーを調整。そこから塗装を盛ってもっちり感を出していきます。
![ロッド装飾アワビ貼り](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/46C1624F-1800-4AD6-A51D-4343297C27AE-1024x576.jpeg)
練習も兼ねさせて頂き、コスメは遊びました。まず塗装は覚えたてのキャンディ塗装。シルバーを薄めに吹くことで、下地の黒が効いて全体的に渋めの雰囲気になり、更にグラデーション感が出ます。厚めに塗ったことで、狙ったテイストが出せました。手書きは挫折したためテプラでネーム入れ。飾り巻きはアワビを下地に貼り、それを希望のスレッドを使った2軸シェブロンで締め上げ。簡単ですけど映えるデザインになったかと。
一旦これで普通のストレートガイドに組んでみましたが、どうしても元竿のガイドセッティングのままだとラインがブランクに干渉します。前回と違って曲がるセッティングだからです。ここでオーナー様と相談し、ガイドセッティングもやり直し、遊ばせて頂きました。
![スパイラルガイド](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/DC2C084C-1335-4866-97CE-CFF935CEA50B-1024x576.jpeg)
これでラインの干渉は避けられます。放出抵抗を減らせる取り付け方もだいぶ掴めてきており、テストでも良好でした。このセッティングはバットパワーを使い切るためにも有効なのですが、今回は敢えてバットパワーをあまり引き出さず、曲がるセッティングに。純正の曲がる楽しさを更に伸ばし、大きな弧を描く楽しいファイトをして頂くのが狙いです。それでも底力は純正状態より増してます。AGSを一部使ってますが、コストを抑えるため手持ちで丁度いい径と足高さのものを探したらたまたまAGSだっただけです。本当は携行時の破損リスクを考えるとステンレスフレームが良いかもしれません。
というわけで許可を頂き実釣テスト(コイングw)と仕上げ塗りを経て完成です。
![JetSetter60C延長ピース](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/D3A1BF95-DB76-4562-8377-A0665E32D432-1024x576.jpeg)
![アワビ貼り・シェブロン巻き](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/9052D961-6F1B-4BEE-A142-AD00F6B0BED1-1024x576.jpeg)
![ロッド飾り巻き](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/FF34F7F8-7309-4568-AF86-E2314777D2ED-1024x576.jpeg)
逆並継によるブランク径の違和感を消すため、エポキシは厚塗りです。穂先側のラッピングも簡単だけど映える感じに仕上げてみました。ブランクは渋めかつラメラメなので、目立ちつつ純正との馴染みも良いと思っています。ただエポキシ技術はまだまだ修行が必要ですね。今回はちと贅沢にロッドスミスを使用しました。扱いはやや難しいですが仕上がりは美しいエポキシです。
![JetSetter60Cベンドカーブ](https://gautraman.com/wp-content/uploads/2020/12/7D6892F9-E168-45DE-8430-B213154AC43A-1024x576.jpeg)
自分でも使いたいような楽しい仕上がりになりました。これからオーナー様のもとで活躍してくれることを願います。
使ってみると、同じオーダー内容であっても2本は全く違う仕上がりです。ご希望内容や使われ方を想像しながら組んでいくのはとても楽しくやりがいのある作業です。仕上げはまだまだ完璧とはいえません。でもユーザーとビルダーの顔が見える竿にはなったと思います。
<ご参考>スパイラルセッティングについて
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