美しき彫金リールのススメ
現代の洗練されたリールはもちろん美しいのですが、オールドリールはまたそれと違った良い意味の道具感と、そこに同居する不思議な気品があります。気品を生み出しているのはその造形でもありますが、時代的背景もあります。当時は今ほどリールを使った釣りが庶民的ではなく、ハイソな文化だったと思われます。そのため当時のリールにはステータスを示す高級感が与えられ、工業製品でありながら工芸品的な美しさを持つこととなります。その象徴的なデザインが、彫金でした。さすがに本手彫りのリールはほとんどなかったでしょうが、昔のリールには彫金を模した造形が多く採用されています。

せっかくですから、現代のリールにもそんな気品を与えてみたいと常々思っていました。私はバンタムMGLというリールに特別な思い入れがあります。しかしこのリールは気品とはかけ離れた武骨なデザインで、お世辞にも高級感は感じられません。しかしコアソリッドボディを名乗るアルミの塊感は、標榜通りバンタムという往年の名機の’魂’を受け継いでいることが感じられます。きっとこいつは化ける・・・往年のバンタムと同じく憧れのリールになれる・・・。こいつを現代のバンタム100EXにできないかと考えました。
バンタム100EXの特徴といえば、ブルーメタリックのお洒落な色味と、フレームにあしらわれた彫金風デザインです。これを再現し、超えるには、本物の彫金を施すしかない・・・そうやってネットの海を泳いで出会ったのが、彫金師のIMULTAさんでした。
ご相談差し上げたところ大変丁寧に対応頂き、別途ご相談していた塗装ショップと並行した3者製作と相成りました。塗装の方は色々トラブルもありIMULTAさんへの引き渡し時期や順番も変わってしまいましたが、無理をお願いしてお請け頂きました。本当はアルマイトをかけた上から彫って頂くはずでしたが、アルマイトに失敗してしまったことで代替案として、①塗装→②彫金→クリアコートという彫金には厳しいであろう工程となってしまったのです。
*鋳物アルミのバンタムボディはアルマイト難しいんです。当時の紆余曲折は以下の記事に・・・。
正直、塗装が剝がれてしまい修正の必要が出てしまうと思っていました。しかし一切そんなことはなく完璧な仕上がりでした。実物がこちら。
これがあのブサカワだったバンタムMGLとは思えません。バンタム100EXに勝るとも劣らないエレガントさです。バンタムMGLの魂たるパーミング側スプール受けには、憧れの魚であるアカメを彫って頂きました。Bantamのレーザー刻印は削ってしまって良いと事前にお伝えしておりましたが、なんと綺麗に残して下さいました。魚とも完全に調和しています。これぞプロの技・・・。
こちらのバンタムをIMULTAさんがブログやSNSで紹介されたところ、リールの彫金オーダーが増えたようで、ブログで様々な美しいリールが見られるようになりました。どれも目の保養になる素晴らしさです。素晴らしいのは勿論IMULTAさんですが、なんだか初期に頼んだ側としても嬉しいですよね。
私も第2弾として、ミリオネアCTの彫金をご依頼しました。こちらは大好きな秩父イワナを彫って頂き、最終的に魔改造を施して渓流フィネス用に使う予定です。魚の写真だけお送りし、レーザー刻印を境に水中と陸を表現して頂きました。本当にお見事です。

オーダー時のご注意
蛇足ですが、彫金をご検討されている方にリール好きとしてのアドバイスを記します。もちろん詳しくは彫金師さんご本人に確認して頂きたいですが、事前に理解していると良い点がいくつかあります。
まず何より素材及び表面処理に注意です。
カルカッタコンクエスト、リョウガ、ミリオネア、アンバサダーのカップ部などアルマイト処理がされたアルミ製リールは、彫金部のアルマイトが剥げるわけですので、海水がついたまま保管したりすると腐食リスクが出てきます。とはいえちゃんと手入れをしていれば数年で腐食するといったことはないでしょう。市販のコート剤を塗布してあげるのも良いと思います。
*ちなみに下記のように彫りの隙間にシボ?を入れると工数が一気に上がるようですが、カッコいいですね。
バンタムMGL、SLX、アルファス、ジリオン、スティーズAなどのメインフレームに見られるアルミ+塗装の場合は、塗装を割らずに彫って頂く必要がありますので、彫金師さんによくご相談されてください。もちろんこれも彫金後のお手入れは欠かせません。また塗装の場合は、全体にクリアを吹いてあげるのも一案です。私のバンタムMGLもそうしています。凹凸のキレは失われますが、耐久面では安心です。
アンタレス、スティーズSVTWなどのメインフレームに使われるマグネシウム+塗装は特にリスクが高いです。マグネシウムは剥き出しだとあっという間に腐食します。コートを検討しつつ、手入れを欠かさないことはもちろん、ある程度割り切りも必要になるかもしれません。IMULTAさんはお客様とよくご相談の上で対応されているようです。
樹脂+塗装の場合は、そもそも彫れるかどうかを事前にご相談されると良いかと思います。彫金師さんごとに考え方があるかもしれません。
材質がわからない場合は下記のようなメーカー発表の情報を参考にされると良いと思います。ただし例えばダイワではフルメタルのような表記がされていても、スプール受パーツがメタルで外装カップ自体は樹脂だったりするので注意が必要です。また時々表記に間違いがあったりしますので(汗)、よく確認してからオーダーされることをお薦めします。
シマノ両軸リール仕様一覧2019
http://fishing.shimano.co.jp/product/reel/pdf/spec_bassbait_reel_2019.pdf
シマノ両軸リール仕様一覧2016
http://fishing.shimano.co.jp/product/reel/pdf/spec_bassbait_reel_2016.pdf
*2016くらいまではフレーム・本体A・本体B毎に記載がありました。本体Aがメインギア側、Bがパーミング側
シマノスピニングリール仕様一覧2019
http://fishing.shimano.co.jp/product/reel/pdf/spec_hanyou_reel_2019.pdf
ダイワベイトリール諸元表 *2021.2現在改装中
https://www.daiwa.com/jp/fishing/chart/data/bait/index.html
ダイワスピニングリール諸元表 *2021.2現在改装中
https://www.daiwa.com/jp/fishing/chart/data/bait/index.html
*旧いモデルもモノによっては検索すると出てきますよ

よく候補になるわかりにくいリールを解説しておきます。
<19以前のアンタレス>
サムレストなど鏡面メッキの部分はアルミですが、本体フレームはマグネシウムです。メッキ部を彫ると、中間層が見えてきてまた味わいのある見た目になるようです。21アンタレスは正式発表前なのでわかり次第更新します。
<21以前のスティーズ>
一見ダイワの説明だとフルメタルに見えますが違います。スティーズSVなどのエアメタルハウジングは、シマノでいうメインフレームと本体Aがマグネシウム+塗装で、本体B内部に隠れているスプール受け(セットプレート)がアルミ、そして本体Bが樹脂です。スーパーメタルハウジングと呼ばれるスティーズAは、メインフレーム・本体A・セットプレートがアルミで、本体Bは樹脂です。

スピニングリールの場合は、ローターへの依頼はご注意を。市販のローターは回転ブレがないように重量バランスをシビアにとってあります。影響は小さいとは思いますが、彫る位置と量によっては回転ブレを招いてしまう可能性があります。
分解して送った方が親切な場合も
なるべく分解して送ってあげた方が良いと思います。まず彫金作業時はしっかり固定しないといけませんが、分解しないとそれが難しくなりますし、削りカスが混入しないようにする養生も大変です。
ただIMULTAさんは彫る部位によっては分解しなくても大丈夫とのことでした。ご相談の際に聞かれると良いでしょう。
改めてIMULTAさんの宣伝を・・・。
ここまでリンク貼りまくっているので今更ですが、IMULTAさんにご依頼されるのは超オススメです。当たり前ですが一銭も頂いてませんよ。ちゃんと理由もありまして・・・
①リール彫金のご経験が豊富
②金属や表面処理に対する造詣が深い(露出部への防錆処理などもされているそうです)
③大変丁寧な扱い(肉厚が薄い、素材硬度が低い、形状、そういった事も気遣いながら彫られています)
④傷有りリールもうまく傷を消しながら彫って下さる(ブログご覧ください。見事です)
⑤リーズナブル!
リーズナブルって本当かよ、という声もあるかもしれませんが、実物やブログの作業風景をご覧頂ければ、どれだけ神経をすり減らすような作業を長時間かけてされているかわかります。しかも全て一品ものです。個人的にはとんでもなく安いと感じています。
気になったら、ぜひご連絡してみてくださいね。
ご自身でされたい方も、ブログで練習方法などをご紹介されています。私もいつかは!
それでは
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