ベイトPEのススメ/ロングリーダーのメリットとシーン別設定

2020年12月24日リール

ベイトリールにとってPEラインは、どんなカスタムパーツより優れた逸品といえます。軽く、細い。これが与える最大のメリットは、スプールの大幅な軽量化です。モノフィラライン(ナイロン、フロロ等)より細いため浅溝スプールでも十分なキャパが確保でき、そして糸自体も軽い。これによりまるで社外スプールを入れたようなフィーリングが手に入ります。オールドリールもPEを巻くだけでいきなり現役同等の性能になるくらいです。それほどPEラインによるキャスタビリティの向上は効きます。

そしてPEラインに必須となるリーダー。このリーダーセッティングは使い心地に大きな影響を与えます。スピニングリールですと一般的にリーダー長は数十cmですが、私はベイトリールに50cmから最長で10m程度までのロングリーダーを組むようになって、釣りが劇的に快適になりました。またシーンに合わせたセッティングができるようになり、下手なりに頭を使った釣りが展開できるようになりました。今回はベイト×PEラインと、その性能を活かし切るロングリーダーシステムについてご紹介します。

※ここではガチンコのロックショアゲームで使われるLDリールのロングリーダーシステムは語りません。経験がありませんので(^^;)

ベイトだからできるロングリーダー

スピニングリールの場合、スプールにノットを巻き込むと飛距離が著しく落ちますし、ライントラブルも多くなります。やりたくてもロングリーダーは組みにくいです。

それに対してベイトリールの場合、ノットが摩擦系のコンパクトなものでしたら、巻き込んでも飛距離低下やトラブルは少ないです。ベイトリールだからこそ快適に使えるラインシステムなんです。

その上で、まずはベイトPE及びロングリーダーのメリットを挙げてみましょう。

メリット①モノフィラの使用感のままスプールを軽量化(キャスタビリティ向上)

以下のほとんどのメリットはここに起因します。ベイトリールにPEラインを巻く最大のメリットであるスプールの軽量化によるキャスト性能の向上。これを実現したまま、リーダーの長さと材質によって好きな使用感を得られます。

<PEロングリーダーとフロロのみの重量比較>

例えばフロロ16lb100mの場合と、およそ同等の引張強度であるPE1号100m+フロロ16lbリーダー5mでの重量を比べてみましょう。

PEラインの太さ、重量などはメーカーによってまちまちです。とりあえず日本釣用品工業会によりますと、PE1号とは200デニール(9000mあたりの重量が200g)であるそうです。

PE糸の太さ標準規格 http://www.jaftma.or.jp/standard/pdf/pe.pdf

つまりPE1号100mの重量は、200 ÷ 9000m × 100m ≒ 2.2g となります。

フロロはどうでしょうか。16lbをとりあえず4号とした場合、標準直径は0.330mmとのことです。(これ実際はフロロってもう少し太いことが多いですが。)

モノフィララインの標準直径 http://www.jaftma.or.jp/standard/pdf/nylon.pdf

フロロカーボンの比重が1.78g/cm3です。そうするとフロロ5m、100mの重量はそれぞれ

(0.033cm ÷ 2)2 × π × 500cm × 1.78g/cm3 ≒ 0.8g

(0.033cm ÷ 2)2 × π × 10000cm × 1.78g/cm3 ≒ 15.2g

ということは、PE1号100m+フロロ16lb5mで合計3.0g。それに対してフロロ16lb100mで15.2g。なんと12.2gもPEロングリーダーセッティングの方が軽いのです。しかもこれはスプールの慣性に一番影響する最外周にあるラインの重量です。社外スプールで数g削るよりも圧倒的に効果があります。もちろんラインキャパに合ったスプールの溝深さを選ぶ必要はありますが。

そしてリーダー5mもあれば、近距離での使用感はフロロカーボン単体にかなり近いです。軽快なスプールレスポンスとモノフィラの使用感を両立できるのがPEロングリーダーセッティングです。

メリット②根ズレリスクの回避

PEラインの弱点に、根ズレへの弱さが挙げられます。特に張った状態でハードストラクチャーに擦れるとあっけなく切れます。

しかし根ズレが起こる範囲は、ルアーから数m以内がほとんどです。ここにリーダーが配置されていれば、根ズレに対する耐久性はモノフィララインと実質的に同等となります。ストラクチャーを恐れず強気の釣りが展開できます。

メリット③近距離では適度に伸び、遠投時には伸びすぎない

モノフィラの特徴である、ラインの伸び。これはメリットでもありデメリットでもあります。適度な伸びはクッションとなり、魚をバレにくくします。近距離戦において、PEの伸びのなさは魚を弾いたり、バラしに繋がります。それをロングリーダーは防いでくれます。

逆に遠投した時はモノフィラだけではラインが伸びすぎてしまい、フッキングパワーやロッドアクションがルアーに伝わらなくなります。そこでロングリーダーセッティングにすると、伸びはリーダーの長さの範囲で止まりますので、遠投しても伸びすぎないセッティングとなります。近距離から遠投まで快適なセッティングとなるわけです。

メリット④高切れの防止

ベイトPEにチャレンジした方なら経験があるはず、高切れ。シュパッと風を切るようなキャストをしたり、バックラッシュが発生したりしてしまうと、伸びのないPEはリリース直後にあっさりと切れてしまいます。高切れは練習で減らしてはいけますが、人間なのでなかなか100%回避は難しいです。もし希少なルアーを結んだ大事な一投でやらかしたら…。

そこでロングリーダーを組んでいると、まず高切れが発生するリリース直後(スプール最高回転速度が出ている状態)に放出されているのはクッション性のあるモノフィラです。そして最も負荷のかかるリリース直後を過ぎてからノット部分が放出されます。これにより高切れリスクが大幅に軽減されます。実際に私もロングリーダーに変えてからは髙切れの回数が激減しました。(ゼロではないのが悲しいところ…。)

ガッツリリーダーを巻き込んでます。ほぼ高切れはなし。ほぼ…。

メリット⑤軽量リグの飛距離、風による弛み、沈みを補うシンカーとなる

ベイトフィネスで極軽量リグを扱う場合、飛距離が足りなかったり、PEの浮力によってなかなか沈まなかったりという問題が起こります。それに対しロングリーダーは、シンカーの代わりのような役割を果たしてくれ、飛距離や風による弛み、沈下速度を補ってくれます。ジグ単アジングやマイクロスプーンゲームだとこの効果はかなりはっきりと感じ取れます。浮力と風に対する弱さから、スピニングでのジグ単アジングにPEはあまり好まれませんが、ベイトの場合はロングリーダーにすることでPEでもある程度デメリットを相殺できます。

メリット⑥PE自体の高感度を、リーダーが補助する

PEラインは基本的には感度が非常に良いラインです。ただしテンションを緩めると、逆に感度が悪くなります。浮力が強いため弛みも出やすく、一概に感度が良いとは言えない面もあります。

そこで比重の高いロングリーダーを使うと、多少ですがテンションを緩めても感度が維持される印象です。これが弛みが減っているからなのか、リーダー自体が振動を拾ってくれるからなのかはまだまだ検証中ですが、感覚的にはテンションを問わず感度が良くなっていると感じます。

リーダー無しだと上図のように弛みやすい。

メリット⑦巻物の潜行深度を稼げる

私はあまりやらないのですが、ディープクランクなどを深く沈めるのに細いPEは有効なようです。ロングリーダーというよりはPE自体のメリットですね。飛距離も出てかつ細いので、皆が届かない領域にルアーを届けられるわけです。この場合はオードラゴンのような高比重PEが良いでしょう。

メリット⑧コスパが良い

PEラインは根ズレに気をつけていれば耐久性の高いラインで、モノフィラに比べて巻き替えは少なくて済みます。そのためリーダー部分を定期的に交換すれば、PE本線はしばらく使い回しが効くのです。またリーダー用ラインでなくても普通の本線用ラインを使ってあげれば、よりコスパは良くなります。

釣行中も、ロングリーダーなら先端を少しカットしていっても十分長さが残っていますので、頻繁なノット結び直しは不要です。地味に嬉しいところです。

更に、PEが細くて引張強度が高いため、リーダーの太さを変えれば同じ本線で様々な状況に対応できます。これは特に私のような出張パックロッド族には大変有り難いメリットです。


ここまでメリットを挙げてお気づきかと思いますが、ロングリーダーの本質的なメリットとは、PEのメリットを活かしつつ、デメリットをリーダーで補うことにあります。そして状況に合わせた設定をすることで、様々な状況で最適な設定をすることができます。以下は私が実践しているセッティング例です。

※釣り経験値が低いため参考程度に(^^;)

シーン別セッティング例

1.全般:強い釣りでは長め、ライトゲームでは短めが基本

ルアーが重い、タフな使い方をする場面ではやや長め(2m以上)にとることが多いです。逆にライトゲームでは短め(2m未満)になります。これはクッション性と感度のトレードオフで、どちらが重視されやすいかに起因しています。もちろん状況によるので、関係が逆転する場合もあります。

2.バス、シーバス等中型魚向け: PE1.5〜2号+5m前後

根ズレリスク、重めのルアーによる高切れリスク、バラし軽減からやや長めのリーダーを組みます。PE本線も特殊用途でない限りは太めです。リーダー太さはバス用ならルアーと場所に応じて12〜30lb。シーバスなら16〜30lb。ナイロンフロロは状況によって。巻物やヘビーカバーなら10m程度とる場合も。本線はよつあみアップグレードX8が価格・入手性・張り・耐久性と間違いないのでほぼ指定。

パックロッド用リールだとGT-Rウルトラ20lbをリーダーにすることが多いです。ミラクルジムのオーラにより耐摩耗最高です(笑)コシの強さもリーダー向きで気に入っています。フロロだと定番のR18など。磯ラインも試してみたいところです。

3.ライトソルト、チヌ、バス用ベイトフィネス: PE0.6号+フロロ2〜4m

2ほど負荷はかからず、感度もほしいので、スプールにノットを少し巻き込む程度(2m)を目安に根ズレが多い場所なら少し長めに。リーダー太さは8〜12lb。PE本線は0.6号くらい。よつあみボーンラッシュなど細くて強いラインなら0.4,0.5号も。タイラバ用ラインですが極めて良いです。

4.渓流トラウト: PE0.5号+フロロ6lb2m

ピン撃ちにより岩や木で磨耗するので、2m程度やや太めのリーダーを。本線も特別細くする必要はないので強度重視。スレた渓流なら全体的に細めに。

5.エリアトラウト、アジング: PE0.3号+材質長さ様々

かなりラインセッティングにシビアな釣りなので、50cm程度の短めから10m程度まで、材質もナイロン、フロロ、エステルと様々使い分けです。リーダー太さは対応できる範囲で細く。本線はリアルデシテックスか、最近はPEではないですがシンカーアジングを試しており耐久性以外は好感触です。

アジングのセッティングについてはこちらでより詳しく解説しています。

6.出張タックル①: ボーンラッシュPE0.5号+4〜16lb

出張時に携帯するワンタックルに組む特殊セッティングです。銘柄指定のボーンラッシュは、細くてもかなり強いラインです。そのため4lb程度を合わせてもあまり太く感じませんし、16lbを合わせても強度的に負けません。フィネス寄りのリールに合わせると超万能タックルになります。細リーダーなら2m前後、太リーダーならなるべくクッション性重視で10m前後。長さを大きく変えることでルアーウェイトによるスプール径の調整にもなります。3〜5のセッティングを1つのスプールでやってしまう感じです。


唯一最大のリスクはノット部分

正直、ベイトPEロングリーダーには特殊な用途(スーパーディープ、超ヘビーカバー等)でない限りデメリットが少ないと感じています。ただその中で唯一リスクがあるのがノット部分です。ガイドに接触する回数が多いため、ノット部をガイド外に出しているショートリーダーより磨耗で痛みやすいと感じます。(ショートリーダーはキャスト時の負荷がダイレクトにかかるので、総合的な耐久性はさほど変わらない印象です。) ほどけたり痛んでいないか、頻繁にチェックした方がよいです。

またノットが丁寧に組まれていないと、スプール内で糸が絡んだり、ノットがサミングする親指を削ることになります(笑)けっこう痛いので、細く仕上がる摩擦系ノットで終端もきれいに仕上げる必要があります。焼きコブは親指への凶器になりますので、コブ無しで安定した強度を出せるようにならないといけません。私は定番のFGノットをコブなしで組んでいます。リーダーと本線の太さが大きく異なる場合は、ハーフヒッチを多めにとってなるべくノット前後の太さと張りが急激に変わらないようにします。これで慣れるとほとんどトラブルはありません。

高比重PEの開発を希望

本来はPEラインにもう少し重さがあると、総合的な使い勝手は向上します。2020年現在、いくつかの高比重PEが発売されていますが、これらはエステルなどの高比重繊維を芯に入れて撚ったり、PEと一緒に撚ったりしたものです。結果、どうしても耐久性が低いのです。私もオードラゴンを試しましたが、現状では難ありと言わざるを得ません。それでも比重は変え難いメリットがあるため、今後より良い高比重PEが開発されることを願います。

※2021年、シマノよりピットブルG5という格安高比重PEが発売、更にバリバスが高比重8本撚りを開発中とのこと。楽しみですね!


そんなわけで、ベイトタックルを楽しくするPEロングリーダーについてご紹介しました。機会があればお試しください。ちなみに下記はその道の先輩の神記事です。(最初からこれ読めば良かったなんて言わないでw)

リール

Posted by gautraman