市販パックロッドレビュー① トランスセンデンス プルクラ62B+

2020年12月5日タックルインプレ

本当にいい時代になりました。パックロッドが各メーカーから発売され、価格帯やスペックで選べるようになり、マニアックな竿も増えてきています。

流行っている要因はいろいろあります。製造技術の向上、運送コストの変化、インディーズメーカーによるマーケティング…。今後流行が落ち着いて淘汰された時、市場に残るのはどんな竿でしょうか。

ここでは個人的にオススメできるパックロッド、または影響を受けたパックロッドについて語ります。時々毒を吐くことも…。

<トランスセンデンス プルクラ62B+>

プルクラ62B+

https://www.transcendence555.com/pulchra62b

トランスセンデンスはパックロッド専門メーカーで、とにかく釣りが大好きな集団です。スタッフの方々は海外の釣りガイドを兼務されてる方が多く、リリースされる竿はどれも拘りが強く、狙いが明確な竿が多い印象です。ガチンコ系パックロッドといえばディアモンスターシリーズがありますが、あちらはシリーズ全体の連動性を持たせて「釣り旅における最高効率」を求めているのに対し、トラセンは旅の利便性はもちろんですが、それを確保した上で狙った用途に対する最高性能を目指す、といったアプローチの仕方を感じます。なのである意味ワンピースのまま運用しても楽しい竿たちです。

前置きが長くなりましたが、プルクラ62B+です。ビックリマン高田さんプロデュースの竿ですね。細かい仕様は上記のメーカーHPに詳しく載っているのでそちらを見ていただければ良いです。レングス可変システムは私もビルドで真似させて頂いてます。バランサーで使用感の微調整もできるようになってます。

この竿はパックロッドということを抜きにしてもかなり特殊な竿です。

まず構造的なところでいうと、延長セクションを別にするとオール並継の竿です。ふつう並継の竿はハイテーパー気味になります。バットにいくにしたがって太くしないといけないので当たり前ですが。それによりバットパワーを得やすい反面、良くも悪くも細身に仕上げにくいのです。ところがプルクラはそのパワー感に対し全体的に細身です。使用感としても実際に細身感があります。

並継の特徴を語った記事です↓

ティップはML、いやML-といった柔らかさを持っています。振るとプルプルします。プルクラだけに。高田さんはカワハギ竿みたいと自評してました。たしかにガイド数も多い。そしてバットはHクラスの底力です。ランカーシーバスくらいじゃ全くノされません。ただその力強さはハイテーパーのような曲がらない強さじゃなく、曲がりながらパワーを出すテイストのHクラス。非常に筋肉質な竿です。これらを共存させるのはパックロッドならではの設計といえるでしょう。

プルクラ62B+
73モード。並継パックロッドでこんな細身のバットは珍しい

私は主にシーバス、バス、チヌに使っています。これらで普通に使うルアーはほぼ全て投げられます。ティップの柔軟性から、3g程度あれば竿を曲げていけますし、高田さんはプルクラで2oz級のビッグベイト投げまくってます。第一印象だと「大丈夫かよ」なんですが、なるほどベリーからバットを使って射出するコツを掴むと不安なし。中量級ルアーもそのへんのパワーを使えるとかなり飛距離出ます。「垂らしをとらずに投げると正確に打ち込めます。」というアドバイスがありましたが、言い換えるならば「ティップが垂らしの代わりと思って下さい。」というイメージです。

ティップの柔軟さゆえ、重たいリグを小突くようなアクションなどは苦手です。チニングにも私は使ってますが、専用竿と比べるともう少し穂先の張りがほしいとは感じます。が、全く問題はないレベルです。このティップからベリーの真骨頂はバイト時点から発揮されます。まず魚がよく乗ります。違和感なく吸い込まれる穂先ってやつです。そしてベリーはしっかりしてるので、太軸フックも掛けていけます。で、ファイト時は細身らしく魚に追従するのでバレる不安が少ないです。実際この竿で捕獲率は自分の腕以上に上がったと感じます。(それでも腕が足りずバラしますが…。)このへんの性能があるから、繊細なビッグベイトゲームなんかに使われるみたいですね。そのテの釣りは経験値なさすぎて語れません…。

グリップは長めですがかなり細く削り込まれており、操作性を殺さないようにしていると思われます。脇挟みできつつ軽快に使える絶妙なバランスです。

プルクラ62B+
10g直リグくらいならボトム舐めたり小突いたりもOK

巻き物竿ではないとのことですが、巻き物も全然いけます。尖った性能を持たせた結果、汎用性もある程度得てしまうといったタイプです。活躍の場面は非常に多い竿です。

感度ですが、良いと言えます。この竿の筋肉質感は高弾性カーボンからきている部分も大きいと思います。更に怪魚竿(といっていいかわかりませんが)としてはかなり小径多点のガイドセッティングで、ラインテンション、ライン材質を問わずよく振動を拾ってくれます。またビルダー的には、この径で太リーダーが問題なく使えるということが大変勉強になっています。

弱点・注意点としては、こんな不思議構成なのでフィーリングは独特です。コツを掴む必要のある竿なので、ホームページや高田さんの説明記事を読む事をおすすめします。アクションを積極的にかけるような場合も普通の竿(?)と感覚の違いがあるので、慣れる必要があります。キャスト時も、ティップの特性を掴まないと、収束の良いティップではないためうまく決まりません。私はそれで下手くそを露呈してました…。あとはACSリールシート。慣れるとなかなか良い塩梅ですが、嫌いな人も多いシートです。手の大きい人、強く握り込む人は合わないかと。逆に力を抜いても保持できるので、この竿に慣れる過程で「楽に持つ」ことを覚えられた気はします。

私の場合はほとんど73モードで使ってます。ボートやるなら62でしょうが、基本おかっぱりだと73です。そして裏技として、追加セクションを単品購入すると84モード、プルプルクラになります。これがなかなか使えます!シーバスゲームだと84を選んでますね。なお構造上は無限に増やせますが、84以上はグリップとのバランスがとれず、バットが妙に負けてる竿になるかと。

というわけで、個性的かつ他の竿にない優位性をもったすごい竿、それがプルクラです。攻撃的パックロッドを求める方にはオススメです。