【保存版】折れた竿をマルチピースに改造!理想的な印籠継づくりを実践

2021年5月16日ロッドビルド論

さて前回のロッドビルド論では、印籠継の性能を高めるための様々な技術や工夫についてご紹介しました。今回はそれを活かしつつ、実際に折れた竿を印籠継でマルチピース化して復活させてみましょう。

※基本的にカーボンロッドを想定してまとめますが、グラスも基本的に同じです。またソリッド同士を継ぐ場合は別記事がありますのでご参考に!

前回の技術面の記事はこちら↓

0.必要な道具類

まずは道具のご紹介です。

① 必須なもの

・マスキングテープ

・印籠芯になるブランク材

・スレッド(ミシン糸等でもできるがができれば専用品)

・瞬間接着剤 ※液体タイプ

・耐水ペーパー(200〜1000番程度)

・耐水ペーパーを巻くための角の丸いブロック状のもの

・ポスカ

・2液性エポキシ接着剤(30分硬化がおすすめ)

・コーティング用エポキシ(フィニッシングモーターがない場合はUVレジンでも一応可)

・メジャー

・コーティング用細めの平筆

・デザインナイフ(なければカッター)

・キムワイプ(ティッシュでもいいが、拭き取り時に繊維が出てくるので注意)

・ゴーグルorメガネ(不意に飛び散った破片で一生の後悔をしないため。それに瞬間接着剤の蒸気は目に沁みますよ)

・マスク(カーボン粉を吸うことになります。溶剤も多少使うので防毒ならなおよし!)

・シンナー(こびりついた接着剤等を除去)

・細長い棒(ブランク内径より細く、かつ丈夫なもの)

・パーツクリーナー(接着前の洗浄脱脂です)

・新聞紙など(下に敷きます)

②必須ではないが、ないとかなり大変なもの

・ルーター(そこまでパワフルでなくても可。なければ糸のこ等カーボンパイプを切れるもの)

・小型旋盤、無ければ電動ドリル。それもなければ手削りで頑張ります…

・ノギス(理想はミツトヨ等の1/100mm対応高精度なもの。しかし高いのでホムセンの数千円のでもいいが、精度に不安あるので慎重に使用)

・フィニッシングモーター(エポキシを使わないなら無くても可。もしくは固まるまで手で回すか(笑))

・アルコールランプ(エポキシの気泡飛ばし。ヒートガンでやる人もいるようです)

・ヒートガン(接着のやり直しに使います)

・集塵機もしくは掃除機(カーボン粉が舞います!できれば吸い込みながら作業してください。糸のこと耐水ペーパーで頑張るなら不要ですが…)

③なくてもできるけどあると便利なもの

・コンパウンド(ブランクの傷を消します)

・ダイヤモンドやすり(荒削りには便利です。)

ちょっと多いですが、道具は充実しているほど楽で正確に作業できます。

1.お題の折れ竿

今回はMCワークスのEXPLOSION804HRの折れ竿を用いて実演します。穂先から70cm弱のところで折れています。

かなりお手頃で入手できました。しかし人気のあるメーカーで、また高負荷で使用される竿なため、私としてもチャレンジングなマルチピース化です。

2.まずは点検

最重要なのがダメージの確認です。パキッと折れていれば良いですが、縦の裂け目が広がっている場合はその部分は基本使えません。スレッドやカーボンロービングで無理やり押さえることもできなくはありませんが、あまりに裂けが侵攻している場合はアクションが大きく変わってしまうのを承知で避けた部分をカットするか、廃材ストック行きになります…。裂けの確認は、ブランクの内側からもよく見てみましょう。

その他、全体的に傷、ガイドリングのヒビ、スレッド部分のクラックなどがないかを確認します。使えない部分があれば交換を検討です。

今回はあまりダメージが拡がってなさそうなので一安心です。

ロッドの折れ口
比較的きれいに折れていました。これなら周囲へのダメージは最小です。

3.継ぎ数の検討

2の工程で、使える部分とその長さが判明します。各ピースの長さを測りましょう。

ここで折れた箇所以外もカットしてパックロッド化する場合は、どこで刻んで何本継ぎにするかを検討します。決めるための要素としては、折れた位置、想定する使い方、重量バランス、アクションなどがあります。

理想的には、ガイドを継ぎ目の位置に持ってきた方が良いといわれています。継ぎ目補強の意味合いと、どうしてもガイドとガイドの間は折れやすいのでそこに継ぎ目を持ってこないためです。また特にあまり可変しないアクションの竿でしたら、曲がりの頂点付近に継ぎ目を作らない方が良いです。折れるリスクが高まるからです。しかしながらそもそもそういう部分で折れてしまった可能性があり、またマルチピース化するのでしたら各ピースの長さは概ね揃えることになるはずです。配慮するに越したことはありませんが、基本的には使い勝手優先で私はいいと思っています。

ほぼ等間隔で刻もうとする場合、印籠芯(フェルール)の長さを考慮しないといけませんので注意です。均等に刻んでしまうと、フェルールを接着するピースだけ長くなってしまいます。詳しくは後述しますが、基本的にバット側のピースにフェルールを装着しますので、それを考慮して長さを決めてください。可能なら穂先だけ少し短めにするとベターです。収納時に他のピースが折損から守ってくれます。

とはいえ折れ竿の場合は理想通りにいくことは少なく、どこかで妥協します。今回は強度優先ということもあり、バット側を1カ所カットした計4ピースにすることにしました。

4.断面カット

折れた位置なら、裂けたり傷ついている範囲を全て捨てるつもりで刻む位置を決めてください。見た目では傷が見られない場合も、念のため両側5mm〜1cm程度はカットしてください。

折れてない場所をカットする場合は、フェルールが露出する長さ分捨てるようにカットします。だいたい1〜2cmです。この継ぎシロになる部分は、将来的にフェルールが磨耗してきた時のための余白であり、またフェルールの曲がり具合を確認するスペースでもあります。このあとの作業性の面でも、少し捨てておくと良かったりします。

刻む位置を決めたら、いよいよルーター等でカットしていきます。まず大事なのは、カット位置にマスキングテープを貼ることです。写真のように両側に貼ります。(この竿の場合、ちょうどいい位置にガイドスレッドがあったので片側は単に撮影用ですが。)貼るときは斜めにならないよう気をつけて。キツく巻きすぎるとブランクを締め付けてしまうのでほどほどに。

折れ竿の切り口
切断箇所に、切りシロを残してテープを貼ります

このテープは2つ目的があり、1つはカット位置が正確に見えるようにするため、もう1つは割れ・裂けの防止です。斜めにならないよう貼れていれば、カットした後テープ際まで削れば斜めにならずきれいに削れます。またこの時点で繊維が裂けたりするのを防いでくれます。いきなりテープギリギリをカットするのではなく、少し離してカットしてから、切り口を平坦にならすように削ってテープまで辿り着くと良いです。

この後の作業では、ロッド本体に何度もフェルールを抜き差ししますので、そのままマスキングテープは貼っておきます。もしビニールテープやセロテープでこれをやってしまうと、伸びがあるため作業中にあっさりと割れます。(昔これで一本ムダにしました…。) こだわるならスレッドやPEラインを巻いて軽くコートすると完璧ですが、私は今のところマスキングテープを5周ほど巻けば特に問題ないと感じています。

5.印籠芯(フェルール)の材料選定

きれいにカットできましたら、ノギスで継ぎ目の内径を測ります。これに合うフェルールを制作します。この計測は誤差が出やすいので、何点か測ってください。

材料ですが、他の折れ竿を廃材利用するか、市販のカーボンパイプを購入することになります。

今回はスコーピオンシャウラの折れ竿、旧ハートランドのソリッドモデルの折れ竿を芯材に使用
今回はスコーピオンシャウラの折れ竿、旧ハートランドのソリッドモデルの折れ竿を芯材に使用しました

市販はイシグロの「印籠継用芯」や、サノファクトリーさんが有名ですね。サノさんのカーボンソリッドロッドにはHMとHD、それからDPPマイクロなどの種類があります。HMはHigh Modulus(高弾性)、HDはHigh Density(高密度)の意味で、どちらもそれなりの張りがあります。マイクロは説明文を読むと、23tくらいのカーボン繊維を単一方向にハイテンションで成形…みたいな感じで書かれており、値段も高めです。個人的にマイクロは印籠用としてはちょっとパリパリすぎて扱いにくい印象…。まぁ最近買ってないので曖昧な記憶での話です。気になった方は試してみてください。

選定で重要なのが硬さ(張り)、厚み、弾性、テーパーです。基本的に継ぐロッドの内径に合わせた太さになるので、ロッド本体と同じだけの張りを持たせるには、より厚みを要します。

元のロッドより厚みがあって、細身でも張りが得られるものが基本になります。

そのうえで、ロッド本体の性格に近いものが理想です。厚みは粘り感に繋がるので、必然的にある程度パリパリ感より粘りを感じるものにはなりますが、ロッド本体が高弾性パッツン竿でしたらなるべく印籠も軽くパリッとしたものにしたいですし、低弾性感の強い良く曲がる竿でしたら、印籠だけパッツリしていると竿の性格が変わってしまいます。廃材でしたらある程度元の竿の情報は得られますので、参考になると思います。迷ったら肉厚で粘りがあり、強度に不安のないものを選びましょう。(上級テクとしては、敢えて印籠の性格をもとの竿から外すことで、竿全体の性格をコントロールすることも可能です。)

ソリッド材は潰れにくいので、潰れが起きるチューブラーロッド本体とのミスマッチが大きく、必ずしもソリッド材が折れにくいわけではないと考えています。ソリッド材は低弾性で樹脂量も多めなことが多く、経験的にチューブラを重ねたほうが張りも得やすいです。ただし曲げ強度自体はソリッドが優れているので、細身になる穂先周辺はソリッドを使うことが多いです。

テーパーですが、これはなるべくロッド本体のテーパーに近い方がいいです。完全にはなかなか一致しないのですが、大きくテーパーが異なるとそれを合わせるため大きく削らないといけず、強度を著しく落とします。研磨した部分はカーボン繊維が切れてしまい、当然強度は落ちますし剥離もしやすくなります。多少の研磨は必ず必要になるので、完璧でなくていいですが、まずは見た目でなるべく近いものを探してください。なおこの観点から、市販のストレートパイプを使う場合はテーパーのキツくない竿限定です。ソリッドの場合はストレートから削り出してもほとんど問題ありません。

さらに贅沢を言えば、フェルールこそ良いブランクを使うべきです。質の良いカーボンを使い、補強構造がしっかり入って破断強度が高く、かつ細身に仕上がっているブランクが最高です。例えばノースフォークコンポジット、シマノ、Gルーミスなどの中堅以上のモデルの廃材は個人的に気に入っています。それからハートランドのソリッドパワースリムはソリッド外層に更にシートが巻いてあり、なかなか良い構造です。とはいえなかなか理想のものは手に入らないので妥協は必要です。極端に安価・古い・高弾性な廃材はいくら径が合っていても避けた方が無難です。

良さそうな候補が見つかったら、手でブランク本体の継ぎ目付近と材料候補を曲げ比べてみてください。曲げ込む両手の指間の距離を同じくらいにして曲げ比べます。だいたい張りが近そうでしたら、とりあえずそれで進めていくことにします。指間距離が違うと手に伝わる張りも全く変わってきますのでご注意を。

指間の距離をおおよそ同じにして曲げ比べると、張りの強さが比べられます

6.フェルールの製作

材料を決めたら、継ぎ目の内径に近い部分を切り出します。なお前後何cm切り出すかですが、このへんは感覚的な部分になってしまいます。目安としては、バス用のミディアムクラスのセンターを繋ぐとして、挿入部分が両側とも4〜5cm、継ぎシロが1〜2cm、合計10cm強くらいが完成形です。これを基準に柔らかい部位ならこれより短め、硬い部位なら長め、軽さ重視なら短め、強度重視なら長め(といっても長すぎると逆効果ですが)、という感じです。切り出し長としては更に計測誤差や削る余裕を見て前後3cm以上は長めにとってください。この時も端部にマスキングは貼っておきましょう。塗装がかかったブランクならそれを剥ぎますし、切り出した後に太くするのは難しいので、バット側は特に余裕を持って切り出してください。

切り出せたら、まずは穂先側から合わせていきます。とりあえず穂先側のマスキングだけ剥がして本体に挿し込んで様子を見てみましょう。テーパーがピッタリならガタつきを感じないと思いますが、ふつうはズレているので、いっぱいまで挿し込んでもフェルールがガタガタ動きます。

ここで高精度ノギスを持っていたら、ブランク本体の継ぎ目と、フェルールが挿し込まれた時にフェルール端がくるあたりの外径を測ってみましょう。短い区間ならブランクの厚みはほぼ同じと思われるので、これで内側のだいたいのテーパーが予想できます。フェルールの方も測り、先端を削ればいいのか、真ん中あたりを削ればいいのかを調べます。なお中途半端なノギスだと精度が怪しいため、逆効果になることもあるので注意です!

高精度ノギスならこのように近い距離で外径を比べても正確に径差がわかるので、内径のテーパーが想定できます。

☝️ワンポイントテク① ポスカで確認
高精度ノギスがない場合、画像のようにポスカでフェルールに何本か線を引き、フェルールを挿し込んでぐるっと回します。(あまり力を入れすぎるとブランクを痛めますのでほどほどに) そしてフェルールを抜くと、フェルールとブランク本体が触れている部分はポスカがかすれますが、しっかり触れていない場所はポスカの線が残ります。どのへんが出っ張っているかをしることができます。この方法は仕上げていく過程でも何度か試して頂くとよいです。水性なのですぐ落とせます。

挿入前
挿入後。この場合、画像だとわかりにくいですが先端部分だけかすれているので、逆に他の部分は十分こすれていないことになります。なので先端側を中心に削って整えます。

仮合わせ段階でなんとなくフェルールの硬さを調べることもできます。バット側ピースの根元からフェルールを滑り込ませ、継ぎ目に顔を出させます。(出てこなければこの作業は後回しにして、とりあえず穂先側だけで確認です。)この状態で穂先側ピースも多少ガタついて良いので継いでみて、軽く曲げてみます。この時にフェルールがちょうど良い張りを持っていれば、曲がりに違和感がないかちょっとだけフェルール部分が曲がりにくいくらいになります。張りが強すぎる場合は、フェルールが曲がらずブランクだけ曲がってしまい台形のようになります。この場合は研磨で調整できる範囲ならOKですが、あまりに硬すぎたら残念ながら使えません。逆にフェルールがブランクより著しく弱い場合は、ヘの字に曲がります。多少ヘの字に感じるくらいなら、後述のテクニックで問題なく対応できますが、あまりに弱い場合は残念ながらこれも使えません。

どうしても肉厚なブランク本体ですと、フェルールが負けることも多々あります。そんなときは救済策がありますので本記事の末尾にGOです。

使えそうなことがわかり、どのへんを削るかあたりをつけられたら、いよいよ最難関の研磨による合わせです。マスキングを貼ったままのフェルールのバット側端っこを旋盤もしくは電動ドリルにセットします。チャックを強く締めると簡単に割れますので、ごく軽くセットしてください。回っちゃったら仕方なし、くらいのテンションです。そしてドリルを回しながら、ブロックに巻いた耐水ペーパーで研磨していきます。ここからは丁寧に慎重に、テーパーをブランク本体と合わせながら狙った長さに削っていきます。

風呂場で作業。旋盤は持っていないので、電ドリに優しくはさんで、ブレは指で押さえています(-_-;)

どれくらい径に差があるかにもよりますが、旋盤やドリルを使うなら耐水ペーパー400~600番くらいを優しく当てながら水研ぎで削っていき、こまめに合わせを確認していくと良いかと思います。押し当てるとあっという間に削りすぎるので注意です。手削りでしたら240番くらいから入ってもOKですが、なるべく満遍なく削りつつ、やはり削りすぎに注意です。まぁ正直しんどいので道具をなるべく頼りましょう。

この段階では穂先側の合わせのみ進めるので、バット側半分は研磨しなくてOKです。ただ塗装がかかっている場合は全て剥いでしまいましょう。

☝️ワンポイントテク② 濡らすとよし
ブランクのカーボン繊維を束ねる接着剤は一般的にエポキシ系です。エポキシは100℃未満で軟化します。更に高温になると変質して接着力は失われます。研磨中は手で触れなくなるほど高温に達しますので、ブランクを痛めないよう念のため水研ぎがおすすめです。研磨道具側の消耗も抑えられ、カーボン粉が舞うのも抑えられます。

☝️ワンポイントテク③ この段階では完成させない
ここでガタつきがなくなるようには仕上げますが、継ぎシロはまだ余分に余るくらいでオーケーです。完全に削りきってしまうとあとで修正することになった時に面倒です。また最後に小技を効かせるためもあります。

☝️ワンポイントテク④ 削りすぎてしまったら
多少であればリカバリー可能です。エポキシ接着剤または瞬間接着剤を削りすぎた部分に薄く塗り込めば、わずかに厚みが増し、十分な硬さも出てまた削れます。
瞬間接着剤を大量に使うと、蒸気が出て目に染みますので注意です。塗り込みの際は瞬間接着剤がくっつかないビニール袋などでしごくとよいでしょう。

次はバット側の合わせです。まずどのへんまで挿し込みたいかポスカで線を入れ、バット側からフェルールを挿し込んでみます。たぶん途中で止まってしまうと思いますので、細長い棒で軽く押し込みます。どのへんまで出てくるかを確認の上、穂先側と同じ要領で慎重に研磨していきます。

印籠芯の仮合わせ
フェルールの仮組み

☝️ワンポイントテク⑤ なぜバット側にフェルールを接着するの?
もし穂先側にフェルールを接着するとしたら、バット側の継ぎ目は画像のように逆テーパーに削らないといけなくなります。内径の加工は外側より難易度が高いですし、何より強度が落ちます。なるべくブランク本体を削らずに挿入するには、バット側から挿し込んだ方が無難です。ただ場合によってはグリップエンドを破壊する必要があるので、やむを得ず穂先側に接着する場合もあります。

うまく調整出来たらここで再度、接着前にアクションの確認です。穂先側も継いで、仮合わせ状態で曲げてみます。カチカチ音が出る場合は調整し直しです。前述の通りほんの少しフェルールが突っ張ってるくらいが強度的にはベストと考えます。使用感にも一番影響が少ない状態です。曲がりに全く違和感のないレベルも理想ではありますが、竿が重くなる分わずかにダルさが生まれますので、少し強いくらいがダルさを打ち消してくれます。しかしこれも専用設計でない以上、ある程度で妥協となります。

☝️ワンポイントテク⑥ 多重印籠
ブランクにフェルールが負けている時は、フェルールの内側にもう何層かフェルールを挿して張りを強くします。このとき、内側に挿入するフェルールほど短めにして、下図のように継ぎ目にうまく配置すると、重量増も最小限で、負荷も分散し、曲がりもきれいな理想的印籠に近づきます。最初からこれを狙ってもOKです。もちろんうまく調整できたら最後は接着してください。接着方法は後述。

内芯無しでちょうどよかった場合も、同じ理屈でフェルール両端の内側を少しだけ研磨すると、同様に負荷分散・軽量化に繋がります。ただしやり過ぎは禁物です。

多重フェルール
実際に挿入した多重フェルール

☝️ワンポイントテク⑦ フェルール端外径・ブランク継ぎ目内径を丸める

更に仕上げテクとして、フェルール両端外側は軽く丸めておきます。ここが鋭利だとブランク本体に買い込みますので、少しでも負荷軽減を図ります。

同じようにブランク継ぎ目の内側もほんの少し丸めておきます。フェルールへの負担が減らせます。ただこちらは特にやり過ぎ禁物です。

ほんの少しでOK

ではいよいよ接着です。接着にはエポキシ接着剤を用います。エポキシの選定と混ぜ具合も大事なのですがざっくりポイントだけ書くと、1)混ぜる前に湯煎や、ヒートガンかドライヤーで軽く温めておくこと、2)AとBの配合比をしっかり守ること(ただしAをほんの少し多めに出すとミスが少ない)、3)透明な容器で、AとBの色味の差によるマーブル模様が消えるまでよく混ぜること、4)混ぜたら数分放置して気泡を抜きつつエポキシを馴染ませてから塗ること、などです。市販で手に入りやすいのはコニシのクイック30です。私は更に硬く気泡も出にくいデブコン30ミニッツを使用しています。鉄粉入りのを使う方もいるそうです。

デブコン30ミニッツ
デブコン30ミニッツ。もう少し入手性が良くなればいいのに

☝️ワンポイントテク⑧ 接着剤の調整とカーボン粉
ここまでの作業でカーボン粉が溜まっていれば、これをエポキシ混合時に混ぜてしまいましょう。接着の食いつきが良くなります。
またデブコンはかなり硬く優秀なのですが、若干接着後の軋み音が出やすくも感じます。感度より粘り重視の場合、接着剤に薄め液を軽く添加して柔らかめに仕上げると良いでしょう。

☝️ワンポイントテク⑨ ここでフェルール全体をを軽く荒らす

本当に軽くですが、ここで接着前にフェルールの接着部分を400~600番くらいの耐水ペーパーで軽く空研ぎし、表面を荒らします。目的は接着強度の向上です。やりすぎると径が痩せてしまいますので表面を荒らすだけ。

さらに接着面には軽〜く何本か溝を入れてあげるとすっぽ抜け防止になります。

エポキシの気泡が抜けてきて透明とろとろになったら(コニシだと完璧にはなかなか抜けませんが…。)、竹串や細長い棒等を使って、接着するバット側ブランク本体の内側に満遍なくたっぷり塗っていきます。フェルールが重なる所全体に塗るのがポイントです。塗れたら、硬化する前にフェルールをしっかり挿しこみます。接着剤が邪魔して途中で止まるはずですので、棒で押し込んでいきます。この時、フェルールの精度が悪いと飛び出し具合が変わってしまうっことがあります。このへんはなかなか難しいのですが、多少前後してもそこまで強度は変わらないので臆せずいきましょう。

当然フェルールの飛び出た部分にはエポキシがたっぷりついていますので、キムワイプで素早くきれいに拭き取って下さい。調整し直す場合は、棒にキムワイプを巻くなどしてなるべくきれいにエポキシを拭き取ってください。粘度が上がる前なら拭き取れます。

☝️ワンポイントテク⑩ 詰めもの
接着の際、フェルール穂先側端っこに詰め物をしておくと、フェルール内にエポキシが侵入せず拭き取りが楽です。

接着できたら、あとは硬化までしばし待ちます。なるべく温かい部屋で丸1日は置いておきましょう。複数箇所をやる場合は接着までは全箇所終わらせておきたいですね。

硬化したら、まずは再度仮合わせです。この段階ではしっかり振ってみてください。まだマスキングはしたままです。もしバット側からカチカチ音がしていたら接着やり直しの憂き目に遭います…。完璧に仕上げたと思っても、ブランクは剛体ではないので微妙に圧縮膨張したり、フェルール接着やマスキングテープによる応力で歪んだり、微妙なことで音が出てしまったりします。

☝️ワンポイントテク⑪ 接着のやり直し
エポキシは高温で軟化します。なので茹でてとれる場合があります。茹でてダメなら、確実なのはヒートガンかドライヤーで温めることです。ただし温めすぎるとブランク破損に繋がりますので、ガン先端を動かしながら満遍なく温めて、こまめに雑誌の上などにフェルールを軽く叩きつけ、また温め、と繰り返していくとじきに外れます。カサカサになったエポキシのバリをとって再度接着しましょう。

☝️ワンポイントテク⑫ 部分的に表面を荒らす
フェルール表面が荒れていると、摩擦が強すぎて十分挿しこみ切れなかったり、固着したりする原因になります。しかし滑らかすぎると今度は摩擦が弱すぎてズレやすくなります。そこで穂先側ブランク本体の端部がくるあたりだけフェルールの表面を空研ぎで軽ーく荒らします。そうすることで、挿し込み時はスッと入り、最後だけ摩擦でキュッと締まる継ぎ目にできます。

微調整を行なって完璧!となったら、最初からお世話になってきたマスキングテープをようやく剥がし、ブランク本体継ぎ目にそれぞれスレッドを巻いて割れ防止の補強を施します。コーティングはエポキシが良いですが、モーターがないと辛いのでUVレジンやウレタンを使う方法もあります。

これでとうとう印籠継による再生完了です!ここまでやってようやく最初から専用設計されている市販品に肩を並べられます。とはいえフェルール材料の質が良ければ、下手な中級メーカー品よりいいくらいです。

フェルールワックスは精度が出ていればなくても良いです。ほんのわずかな軋みならワックスで誤魔化すことはできます。また摩耗でフェルールが痩せてきた時や、抜けにくく感じる時は使うと良いでしょう。

☝️ワンポイントテク⑬ ロッドとして更に良いものにするには
フェルール追加によりロッドのバランスは純正状態より悪化しているはずです。使用感が気になる場合、バランスを整えるカスタムを施して本当の完成です。
例えばガイドの軽量化、塗装の研磨、バランサーの追加、グリップ延長etc.

☝️ワンポイントテク⑭ スクリューロックジョイント風
最近試しているのが、瞬間接着剤によるスクリューロックジョイント風加工です。継ぎ目のオスメス両方に半周程度ネジ山のように凹凸を作ると、まったくすっぽ抜けなくなります。詳しい加工はもう少し経験を積んだら記事化したいと思います。

別の竿ですが、こんな感じでガッチリ固定されます
完成!5kgの水平リフトもクリア。曲がりも違和感なく仕上がりました

いやはや文章ばかりの長いブログになってしまいましたが、小分けにせず一気にまとめてみました。このテクニックは折れ竿修復でなくてもマルチピース化のやり方としてご参考にして頂けます。全国の押し入れに眠っている折れ竿たちに光が当たりますように…。

ここまでご覧頂きありがとうございました!

どうしてもフェルールが負けてしまうときは…↓